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特集

園や学校に子どもの発達や配慮の相談をするときのポイントを解説。

2025.11.10

支援や配慮の相談をする重要性

 子育てをしていると、子どもの好き嫌いや興味関心などといった日常的なことに関する疑問や、発達や就学といった長期的な視点で考えなければならないことなど、さまざまな困りごとに直面することがあるかもしれません。このようなことを、園や学校に相談してもいいのかわからない、といった声を耳にすることもあります。実際には、多くの場合、園や学校では子どもに関するさまざまな困りごとや悩みごとを相談することが可能です。担任の先生や養護教諭(保健の先生)だけではなく、申し込みや状況によって、スクールカウンセラーやキンダーカウンセラー(幼稚園や保育園で相談にのってくれるカウンセラー)と話をすることができる場合もあります。相談することによって、園や学校でのお子さんの様子がわかるとともに、園や学校以外での様子を先生たちに知ってもらったり、場合によってはさまざまな配慮を求めたりすることが可能になることもあります。

ただし、配慮の可否に関しては地域が園、学校によって対応が大きく異なります。もし、お子さんが療育など他機関での支援を受けている場合には、療育先と連携をし、一貫した対応を取ることで、さらに適切な発達に向けた支援の提供ができるようになるかもしれません。ここでは、園や学校に相談をする際のポイントについて、ご紹介します。

相談の事前準備、相談時のポイント

 さまざまなメリットのある相談の機会を、さらに有意義にするためには、どのような準備を行い、どのような点に注意したらよいのでしょうか。以下のような観点を参考に、整理をしてみるとよいでしょう。

1)相談前の準備

 相談の前には、まずは家族内で、子どもに対する期待や、将来の姿のイメージを共有しておくとよいでしょう。園や学校生活を通して身につけてほしい能力を確認したり、優先順位をつけたりすることも必要です。また、そのためには、子どもの行動を客観的に観察し、記録すると、具体的な状態像が分かり、園や学校との情報共有も効率的に推進できます。その際には、子どもの苦手な部分だけではなく、何が、どこまでできるのか、といった情報や子どもの好きな活動や物など、子どもの強みと課題を具体的に把握することも必要です。

2)相談時のポイント

 相談をする際には、子どもの様子について、具体的な行動や状況の説明が必要です。「落ち着かない」という表現よりも「椅子に座って2分ほどすると立ち歩くことが多いが、ごはんのときは座っていることができる」のような、具体的な表現で説明を行い、どのような場面で困難が生じているか、あるいは困難が生じないのかを明確に伝えることを心がけましょう。あわせて、できないことだけではなく、「ボタンはめはできないがチャックは上げられる」「お箸は使えないがスプーンやフォークは使うことができる」といったように、できることの情報も伝えることができると、具体的な支援へ結びつけやすくなるでしょう。そのためには、日常生活の観察記録を活用し、客観的な情報を提供することも有効です。

 また、これまでの相談歴や支援歴、知能検査などの結果、診断の有無などについての情報も整理しておきましょう。どのような機関(医療機関や療育機関、保健所や子ども家庭支援センターなど)に、どの程度の頻度通っているのか、診断名や定期的な服薬の有無、通っている療育機関の名称と頻度、実施している活動の記録等の情報がわかると、園や学校がどのような機関とチームを組んで支援を展開していけばよいのか、必要に応じてどのように情報共有をしたらよいのかを検討することが可能になります。さらに、支援歴がわかると、視覚的支援や環境調整など、子どもの特性に合わせた支援方法の具体的な中身について確認することが可能になります。

3)相談が終わった後でも

 相談の後でも、疑問に思ったこと、不安に思ったこと、言い残したことなどがあれば、園や学校に連絡を取ってみて、相談が可能かどうか、確認してみましょう。ただし、時期や相談内容によっては、すでにさまざまな事項が決まっていて、変更することが困難な場合も大いにあります。できる限り、相談の際に気になっていることが共有できるよう、準備をしておくことが大切です。

 また、園や学校側の状況によっては、求めた配慮をすべて受け入れていただけるとは限りません。また、求めた配慮を受け入れてもらっても、状況の変化等によって、配慮が必要なくなったり、他の配慮の方が有効となったりすることもあります。支援や配慮は状況を見ながら変化させることを前提としながら、家庭と園および学校の双方にとって最適な形をみつけることができるよう、コミュニケーションをとることができるとよいでしょう。

園や学校側の対応

 園や学校側は、保護者等から出された要望に対して、「できる/できない」といった判断よりも、保護者の要望の中核は何かということについて、保護者が困っているのか、子どもの成長を期待しているのか、周囲の子どもとの関係性を気にしているのか等の観点から理解していくことが大事です。そして具体的な手続きを保護者と共有したうえで、園や学校の教職員と共有する、という手順を踏むことが不可欠になります。

 そして、実際に行った支援の様子について、定期的に効果を評価し、必要に応じて方法を調整することも必要です。特に、子どもの成長や変化に応じて、新たな目標や支援方法を検討することも大事になります。

 これらの観点に加えて、保護者自身のストレス管理や心理的サポートの必要性についても考慮することも重要です。送迎の際等ちょっとした機会に、短い時間でも保護者に声をかけ、普段気になっていることだけではなく、子どもの成長についても共有することが大切です。

子どもの健全な発達のために

 子どものために、という思いは、保護者と園や学校の先生方とが共通して抱くものだと思います。同じ目標に向かって協働していく上で、相互に配慮をしながら、よりよい支援のために、情報共有ができることが重要です。家庭と学校とで、うまく役割分担を図りながら、支援の展開が行えるとよいでしょう。

小関俊祐/発達障害療育研究所アドバイザー

桜美林大学心理・教育学系准教授。 日本認知・行動療法学会公認心理師対策委員及び倫理委員、一般社団法人公認心理師の会運営委員及び教育・特別支援部会長、日本ストレスマネジメント学会常任理事・事務局長を務める。 2019年より発達障害療育研究所・スタジオそら顧問として活動。

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