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特集

感覚過敏・鈍麻とは?発症のメカニズムとそれぞれの症状・配慮を紹介

2021.02.08

感覚過敏と感覚鈍麻って?

 すべての人には、五感といわれる、視覚、触覚、聴覚、嗅覚、味覚が備わっています。それぞれ、五感に対応した体のいろいろな部分で、外からのさまざまな刺激を受け取り(受信)、その刺激の情報を脳に伝達し、脳がその情報を理解しています。この受信や伝達、理解の段階のどこかで、過剰に反応してしまうことで感覚過敏が起こったり、逆にしっかりと反応できないことで感覚鈍麻が起こったりしていると考えられています。

 

実際には、この五感の受け止め方は人によってばらつきがあり、たとえば料理の達人などは味覚が敏感かもしれませんし、音楽の天才などは聴覚が敏感かもしれません。このように、感覚の過敏さや鈍麻(鈍感さ)は個人差があるものなのですが、これが日常生活に支障をきたしてしまうようなレベルになると、感覚過敏や感覚鈍麻といわれ、支援の対象にもなりえます。

 

 感覚過敏や感覚鈍麻は発達障害の、特に自閉スペクトラム症のある方々に見受けられることが多いですが、感覚過敏や感覚鈍麻があるからといって発達障害というわけではありませんし、感覚過敏や感覚鈍麻がないからといって、発達障害ではないと考えることもできません。

 

感覚過敏の症状や特徴と対応

感覚過敏の解説画像

 では、感覚ごとの症状・特徴と、その対応についてみていきましょう。

 

【視覚過敏】

視覚過敏の症状・特徴:

 蛍光灯などの光が気になって目を開けていられない、少しの明かりでもまぶしくて夜眠れない、テレビやパソコンなどを見続けることができない、などが挙げられます。

 

視覚過敏に対する配慮例:

 最近は、ブルーライトカットの眼鏡や、あまり見た目に違和感のないサングラスなども市販されるようになり、適切な道具に手を出しやすくなってきました。蛍光灯なども、間接照明の工夫などが家具売り場でも紹介されるなど、活用できる工夫がたくさんありそうです。

 

その一方で、学校でもパソコンやタブレットなどが導入された授業が展開されるようになり、授業に集中できなかったり、画面から目を逸らすことで、集中力がないと誤解されてしまったりすることもあるかもしれません。学校の先生に相談して理解を求めつつ、パソコンやタブレットの明るさを調節する方法などを習得することも有効でしょう。

 

【触覚過敏/鈍麻】

触覚過敏/鈍麻の症状・特徴:

 過敏である場合は、服の着心地が気になったり洋服のタグなどがヒリヒリしたりして痛い、軽く触れられただけでも痛がったり嫌がったりする、髪をとかしたり歯磨きをしたりすることを嫌がる、などが挙げられます。

 鈍麻である場合は、熱湯に触れてもやけどをするまで気が付かない、ハサミなどで指を切っても痛みに気が付かないなどが挙げられます。

 

触覚過敏/鈍麻に対する配慮例:

 触覚は全身で感じるものであり、また服を着ることで、常に刺激にさらされているので、適切な対処を講じることができないと、日常生活で大きなストレスにつながってしまいます。

 

基本的には、「OKなもの」を探していき、特に身の周りは「OKなもの」で固められるとよいですね。特に、肌着や下着は、同じものや同じ素材、同じタイプのものをそろえることで、安心して生活することができるでしょう。学校の体操服などが着にくい場合には、先生と相談することも必要です。その時も、体操服全体の感覚がダメなのか、体操服のタグを切ってしまえばOKなのかなど、どの部分の感覚が特に問題なのかを、丁寧に聞き取ってあげると、先生との相談もスムーズになるでしょう。

 

また、歯磨きなどは自分でできるようになると、過敏の程度もコントロールしやすくなるので、歯磨きの方法も早めに習得できるよう、トレーニングが必要です。くしや歯ブラシ選びも重要です。

 

 感覚鈍麻の場合には、熱いお湯がかかってもやけどするまで気付かない、ケガをしても痛みを十分に感じることができない、といった場合もあります。やけどなどの危険があるものから距離をとる対応に加えて、視覚的に、触ってはいけないもの、近づいてはいけないものがわかるようにしたり、血が出ているのに気づいたら親や先生に伝えることを理解させたりする対応が必要です。

 

【聴覚過敏】

聴覚過敏の症状・特徴:

 大きな音、特に突然の音が苦手、時計やエアコンなどの小さな生活音も気になって集中できない、などが挙げられます。

 

聴覚過敏に対する配慮例:

 聴覚に関しては、イヤーマフ(ヘッドホン)などを用いて対処することも有効ですが、重要な音を聞き逃してしまう、というデメリットもあるので、使う場面や状況を考慮することが重要です。

 

苦手な音が出る場所(工事現場など)には近づかない、が原則ですが、音楽の授業など、できる限り避けずに挑戦できるとよい場面もあるでしょう。たとえば、演奏を聴いたり自分で演奏したりする際には、「シンバルが2回なるよ」とあらかじめ伝えておき、「この後だよ、耳ふさいで」などと声をかけてあげることで対応できることもあるでしょう。最初は小さい音量で慣れておいて、次第にみんなと同じ音量で聴けるようになる、ということも大事です。また、授業中などにどうしてもつらくなった場合には、保健室に行くなどの対応を、事前に確認しておくことも必要です。

 

【嗅覚過敏】

嗅覚過敏の症状・特徴:

 特定のにおい(石鹸、香水、乗り物、食品売り場など)が苦手、などが挙げられます。

 

嗅覚過敏に対する配慮例:

 一般的に「いいにおい」とされている石鹸や香水、洗剤のにおいなどが、嗅覚の過敏さがある方にとって「いいにおい」とは限りません。服を着たがらない子どもが、触覚の過敏さが原因かと思っていたら、使っていた洗剤が原因だった、ということもあり、うまく苦手さを言語化できない子どもの場合には、注意が必要です。可能な限り、においを一緒に確認したうえで選択することが良いでしょう。好きなにおいがあれば、それを持ち歩くことで、場所特有のにおいがあるところでも過ごすことができるようになるかもしれません。

 

【味覚過敏】

味覚過敏の症状・特徴:

 特定の味を嫌がる、触感が受け入れられない、などが挙げられます。

 

味覚過敏に対する配慮例:

 納豆のネバネバなど、厳密には口の中の触覚に関する過敏といえるのですが、口の中で起こることとして、味覚にまとめて位置付けています。

 

味覚の過敏さの影響で、好き嫌いが非常に極端で、あるチェーン店の同じメニューしか食べられなかったり、そのためメニュー改訂などが大きなストレスになってしまう場合もあります。

 

 対応としては、苦手なものを無理に食べさせることは避け、可能であれば、給食の代わりにお弁当にするようなことも検討するとよいでしょう。アレルギーのある子どもへの食事対応と、同じように考えていただくとイメージしやすいかもしれません。また、体調や機嫌がいいときに、新しい食べ物や、違う調理法を試してみて、食べられるもののレパートリーを増やすようなチャレンジもあわせて必要でしょう。

 

感覚過敏や感覚鈍麻へのかかわり方

 感覚過敏や感覚鈍麻に対する基本的な対応方針は、「無理強いしない」です。誰しも、「うるさすぎて我慢できない」とか、「臭すぎてもう耐えられない」とか、「痛くて痛くてどうしようもない」ような状況は、避けたいですし、一刻も早くその状況から逃れたいはずです。特に感覚過敏のある方々は、日常的に、我慢しようにもできないくらいの刺激にさらされている、と考えるとよいかもしれません。

 

感覚過敏によってマスクの着用ができない場合も

 コロナ禍では、学校や電車、スーパーなどで、マスクの着用を求められる場面が増えてきましたが、特に触覚の過敏さがある方にとっては、マスクを着けることに大変な苦痛を感じている方々もいらっしゃいます。息苦しさもそうですが、マスクの触れる耳や口の周りに、一般の人々が想像できないくらいの、我慢できないほどの痛みやかゆみなどの苦痛を感じている可能性があります。

 

また、マスクを着けていないことで責められたり、避けられたりすることで自己肯定感が下がるなどのストレスを感じることもあるでしょう。このような視点に立てば、感覚過敏のある方や、同様にさまざまな事情をもってマスクを着けていない方々に対して「何か理由があるのだろう」と、相手の事情や背景を考え、想像して対応することがすべての人々に求められており、社会全体として、他者理解の観点を見直すことも重要になるといえるでしょう。

 

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小関俊祐/発達障害療育研究所アドバイザー

桜美林大学心理・教育学系准教授。 日本認知・行動療法学会公認心理師対策委員及び倫理委員、一般社団法人公認心理師の会運営委員及び教育・特別支援部会長、日本ストレスマネジメント学会常任理事・事務局長を務める。 2019年より発達障害療育研究所・スタジオそら顧問として活動。

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