お問い合わせ 入会案内
特集

なぜ子どものうちからストレスへの対処法を知る必要があるの? ―「子どもと一緒に取り組む 園生活での子どものストレス対処法」が発売されました―

2024.05.13

はじめに

 発達障害療育研究所の顧問である小関俊祐が編者を務め、発達障害療育研究所・研究員の土屋さとみ、スタジオそらでの勤務経験のある先生方も多く執筆者として名を連ねた「子どもと一緒に取り組む 園生活での子どものストレス対処法」が中央法規出版より発売されました。「子どものストレス」と聞くと、それほど深刻なものではなかったり、そもそも子どもはストレスなんか感じないんじゃないか、と考えたりする方もいらっしゃるかもしれません。ここでは、子どものストレスと、なぜ子どものうちからストレスの対処法を知る必要があるのかについて解説します。

・書籍の詳細および立ち読みについてはこちらのサイトをご確認ください。
・書籍の企画に至った、編集者の方の熱い想いについては、こちらのサイトをご確認ください。

子どものストレスとは

 おおよそ30年ほど前までは、「子どもはストレスを感じない。感じたとしても一時的なものであり、大人のストレスとは大きく異なる」と考えられてきました。しかし、ストレスに関する研究が進んだり、子どものストレスに起因すると考えられるような諸問題(不適応や非行など)が多く発生したりすることで、「子どもも大人と同じようにストレスを感じる」ということがわかってきました。

 ストレスとは、もともとは、物体に対してかかる圧力を指す用語でした。それが心理学や生理学の研究が基となり、心にかかる圧力である「心理的ストレス」を表すようにもなり、今では一般的にストレスというと、心理的ストレスを指すようになりました。心理的ストレスは、大きく、ストレスの原因である「ストレッサー」、ストレッサーによって引き起こされる「ストレス反応」に分けられます。ストレッサーには、叱られた、けんかした、暑い、寒い、お腹が空いた、といった、さまざまなものが含まれます。ストレス反応には、不安や落ち込み、無気力、お腹や頭が痛い、などの反応があります。子どものうちは、先生や親に叱られることがストレッサーになりますが、大人になると、上司や取引先に叱責されることがストレッサーになるでしょう。このように、形態が若干異なりますが、子どもも大人も似たようなストレッサーを抱えることが知られています。また、ストレス反応は、子どもも大人も、さらには哺乳類を中心とした多くの動物も、同じストレス反応を感じるといわれています。

 このようなストレッサーやストレス反応を減らそうとするための方法が、ストレス対処法です。心理学の専門用語では「コーピング」と呼ばれています。コーピングには大きく2種類あることが知られていて、たとえば「叱られないように準備する」、「忘れ物していないか確認する」というような、ストレッサーそのものを無くすためのコーピングと、「お風呂に入る」、「スポーツをする」というような、気持ちを楽にするためのコーピングがあります。

なぜ子どものうちからストレスの対処法を知る必要があるの?

 ストレッサーやストレス反応を減らそうとするためのストレス対処法、すなわちコーピングは、たくさんの種類を身につけておくことが有効であるといわれています。たとえば、「友だちと遊びに行く」というコーピングは、子どもにとっても大人にとっても、気持ちを楽にする有効なストレス対処法ですが、友だちの都合が合わなかったり、時間やお金がなかったりすると、実行できません。そのときに、別のコーピングを身につけていれば、スムーズに切り替えることが可能ですが、「友だちと遊びに行く」というコーピングしか身につけていないと、それが実行できないために、かえってストレスが大きくなってしまう可能性があります。そのために、子どものうちからたくさんのコーピングを身につけておくことが、ストレスへの備え、予防に繋がると考えられています。

また、「友だちと遊びに行く」、「わからないことがあったら知っている人に聞く、調べる」、「困ったら相談する」といったコーピングは、大人になってからもとても有効なストレス対処法になる可能性が高いです。しかし、このようなコーピングをすべての大人が十分に身につけているわけではないことも事実です。普段の生活のなかで、家庭や学校の促しによって身につけられる場合もありますが、今の小中学校における9年間の授業の枠組みのなかで、ストレス対処を含む心の健康について学ぶ時間は10時間程度しか設定されていません。だからこそ、小学校に入る前の園生活で、あるいは小学校に入った早い段階で、ストレス対処の方法を子どもたちに身につける機会を確保できると良いでしょう。

編者・小関俊祐よりみなさんへ

 今回は、子どものストレスと、子どものうちにストレスの対処法を身につけておくことの必要性について紹介しました。「子どもと一緒に取り組む 園生活での子どものストレス対処法」は、幼稚園や保育園の先生を主たる対象として書かれた本ですが、保護者の方々にも知っておいてほしい子どものストレスやその支援方法について、園での「あるある」事例が満載です。とてもかわいいイラストや見やすい図もたくさんですので、ぜひ、手に取っていただけると嬉しいです!

「子どもと一緒に取り組む 園生活での子どものストレス対処法」

https://www.chuohoki.co.jp/products/welfare/A011/

編者:小関俊祐著:岸野莉奈、小池由香里、杉山智風、土屋さとみ、新川瑶子

出版:中央法規

書籍に関するお問い合わせは中央法規出版株式会社(https://www.chuohoki.co.jp/)までお願いします。

小関俊祐/発達障害療育研究所アドバイザー

桜美林大学心理・教育学系准教授。 日本認知・行動療法学会公認心理師対策委員及び倫理委員、一般社団法人公認心理師の会運営委員及び教育・特別支援部会長、日本ストレスマネジメント学会常任理事・事務局長を務める。 2019年より発達障害療育研究所・スタジオそら顧問として活動。

著者について見る >