子どもの癇癪(かんしゃく)とは? 原因や発達障害との関連、癇癪を起したときの対応などを解説
2025.12.08- 子どもの癇癪(かんしゃく)とは
- 癇癪で起こる具体的な行動の種類
- 癇癪が起こる原因
- 【年齢別】よくみられる癇癪
- 癇癪と発達障害の関連
- こだわりが強い
- 感覚の過敏さ
- 言葉の発達が遅れている
- コミュニケーションが苦手
- 気持ちのコントロールが苦手
- 衝動性が高い
- 子ども癇癪を起こしたときの対応
- クールダウンする
- タイムアウト法
- 【原因別】子どもの癇癪に対して事前にできる対応方法
子どもの癇癪(かんしゃく)とは
2歳から3歳ぐらいになると「自分でやりたい!」、「こうしたい」という気持ちが出てきます。一方で、「実際にやれること」との間にギャップがみられることが多くあるため、「自分でやりたいのにできない」「思い通りにならない」という葛藤が起こります。
しかし、子どもはその気持ちを上手に表現できなかったり、感情をコントロールしたり、気持ちを切り替えたりすることがまだ難しく、もどかしさを感じることがあります。そのようなもどかしさを、泣き叫ぶ、怒る、物を投げるなどの激しい行動で表現することを「癇癪(かんしゃく)」とよびます。
【癇癪で起こる具体的な行動の種類】
癇癪といっても、場面やお子さんによって、さまざまな行動がみられます。
たとえば、
・叫ぶ
・物を投げる、叩く、壊す
・泣く
・怒る
・自分のことを叩く
・壁や床に自分の頭を打ちつける
・周囲の人を叩いたり、蹴ったりする
・その場に座り込んだり、寝転んだりする
などの行動がみられることがあるでしょう。
癇癪は、「あれがほしい、これをしたい」というような欲求や、自我が芽生えるきざしであり、成長において必要な過程でもあります。しかし、自分や他者を傷つけてしまうような激しい行動が伴うこともあるため、癇癪が起きると、周囲もどう対応したらよいかわからなくなったり、不安に感じたり、いけないと思いつつも強く叱ってしまったりすることがあるかもしれません。
この記事では、子どもの癇癪とその対処法を整理をしてご紹介したいと思います。
癇癪が起こる原因
癇癪の原因はおおよそ以下の4つが想定されることが多いです。
①自分のやりたいことが思うようにできない
子どもはまだまだ身体機能が未発達です。周りの人がやっていることを真似したいけど、うまく身体を動かすことができない・・・ということもあるでしょう。そのような場面では、イライラがつのり、癇癪を起こしてしまう場合があります。
②自分の気持ちをうまく伝えられない
感情には、嬉しい、楽しい、イライラ、もやもや、無気力など、表現も多様です。しかしながら、子どもは自分の気持ちを十分に伝えられない場合が少なくありません。感情表現に限らず、自分の伝えたいことをうまく表現できないと、癇癪を起こしてしまうことにつながります。
③怒りの対処方法をまだ身につけていない
怒りやイライラ、もやもやの感情をうまく表現できないことに加え、対処方法もまだまだ獲得できていない場合もあるでしょう。そのイライラなどの感情を発散させるために、癇癪を起こして表現していると考えられます。
④生活習慣や体調との関連
睡眠不足や運動不足、栄養不足などの生活習慣も影響すると考えられます。生活習慣を振り返ってみることも良いでしょう。
【年齢別】よくみられる癇癪
①乳児期(0歳~1歳)によくみられる癇癪:生理的反応と感情表現
乳児期の赤ちゃんは、生理的な不快を取り除いてほしいときに、「泣く」という行動をとります。これは、自然な反応としてみられるものですが、癇癪と位置づける考え方もあります。
赤ちゃんは「泣く」という行動を通じて、周囲の環境に働きかけていきます。そして、この「泣く」という行動に対して、周囲が繰り返し反応することで、「泣くと欲求を満たしてもらえる」という理解が赤ちゃんの中に少しずつできていきます。このような応答的な関わりによって、赤ちゃんは周囲から関心を向けてもらっているという安心感を得ることができ、応答的に関わってくれる他者との間に情緒的な絆である「愛着」を形成していきます。
また、生後半年頃になると、生理的に不快なときだけではなく、怒りや悲しみ、甘えなど、さまざまな感情を泣くことで伝えるようになっていきます。
②1歳~2歳頃によくみられる癇癪:自我の芽生え
1歳を過ぎると、自我が芽生え始め、「~したい」「~が欲しい」といった気持ちが少しずつ出てきます。この時期は、まだ自我が芽生え始めた段階のため、周囲の状況や相手の意向に関係なく、自分の思いを一方的に通そうとすることがあります。
また、この時期は自分の意志をうまく言葉で表現することができず、癇癪につながることもあります。たとえば、遊んでいたおもちゃを他の子どもにとられたときに、「やめて」と言葉で伝えることが難しく、他の子どもを噛んだり、叩いたりすることがあるかもしれません。まだ言葉で自分の気持ちを伝えることが難しいため、とられることを防ぐためにとっさに噛む、叩くという行動が出てしまったとも考えられるでしょう。
③2歳~3歳頃によくみられる癇癪:イヤイヤ期
2歳~3歳頃は、「自分でやりたい!」という気持ちがさらに強くなり、自分でできることや自分の領域を広げていこうとする時期です。他者からの手助けや提案に対して、「イヤ!」と言うことが増えることもあるでしょう。一方で、まだ身体機能が未発達なこともあり、「自分でやりたい!」と思ったことと、「実際にできること」との間にギャップが生じることが多くあります。しかし、この時期の子どもは、まだこの「やりたいのにできない」という葛藤を言葉でうまく伝えられず、癇癪につながることがあります。
④幼児期以降の子どもの癇癪:「どうしたらいいかわからない」の表現として
幼児期(4歳~5歳)になると、友達との関係作りが始まります。他者を意識する時期だからこそ、競争心も芽生え、負けた時にくやしさを感じたり、友達とけんかをしたりすることも増えてくるかもしれません。また、自分の思いと周囲の状況の折り合いをつける練習をしている段階のため、思い通りにいかない不満やつらさ、イライラを感じることもあるでしょう。「イライラする」「負けてくやしい」けれども、「どうしたらいいかわからない」、そんな気持ちを癇癪で表現していると考えられます。
発達障害と癇癪の関連
癇癪は、成長の過程で多くの子どもにみられます。癇癪が起こるからといって、必ずしも発達障害であるというわけではありません。
一方で、発達障害のある子どもの癇癪には、発達障害の特性が影響していることもあります。
①こだわりが強い
こだわりの強い子どもは、変化に弱く、見通しが立ちにくいため、同じ行動や考えを繰り返すことで、自分なりの「いつも通り」を作り、不安や緊張を和らげようとしているのではないかと考えられます。
この自分なりの「いつも通り」が崩れてしまうと、他の人にとっては小さな変化でも、戸惑いや不安を強く感じてしまい、癇癪につながることがあります。例として、いつも通っている通学路が工事で通れない、いつも入れている靴箱に他の人の靴が入っているなどがあげられます。周囲にとっては「こんなことで?」と感じるようなことも、こだわりの強い子どもにとっては、「違う道を通ったら目的地にたどり着けるか不安」「いつもと違う!どうしたらいいかわからない」となってしまい、癇癪につながることがあります。
また、「今日は遊園地に行こう」「今日の外遊びは室内遊びに変更になった」などの、予期しない変化が苦手な子どももいます。
②感覚の過敏さ
自閉スペクトラム症などの発達障害がある子どもの中には、音(聴覚)、光(視覚)、触覚、味覚、嗅覚などの感覚に過敏さがあり、これらの刺激を強く感じてしまうことがあります。たとえば、掃除機の音や友達の話し声、他者に「ねえねえ」と肩をトントンと叩かれた刺激を、突き刺さる、痛いというように感じる子どももいます。周囲が何気なく感じる刺激を強く感じることで、癇癪につながることがあります。
③言葉の発達が遅れている
発達障害の特性のある子どもの中には、周囲に対する興味や関心、共感する力が乏しく、なかなか自分から言葉を話すことが難しい子どももいます。自分の思いを伝えたいけれども、なかなか伝わらないもどかしさから、癇癪を起こしてしまうことがあると考えられます。
④コミュニケーションが苦手
発達障害のある子どもは、相手の気持ちを汲み取ったり、やり取りをしながら自分の気持ちと周りの状況をうまく合わせたりするのが難しいことがあります。
そのため、他者とのコミュニケーションがうまくいかず、トラブルになったり、癇癪につながったりすることがあると考えられます。
⑤気持ちのコントロールが苦手
発達障害のある子どもの中には、気持ちのコントロールが苦手な子どももいます。たとえば、負けたときに気持ちをうまく切り替えられず、感情を爆発させてしまったり、つい仲間を責めるような発言をしてしまうこともあるでしょう。中には、負けると自分の存在を否定されたように感じてしまい、癇癪につながるお子さんもいます。
また、一度始めたことをやめることが苦手で、次の活動を促されたときに、なかなか切り替えられず、癇癪が起きることもあります。
⑥衝動性が高い
注意欠如・多動症の特性のある子どもの中には、順番を待てなかったり、思いついたらすぐに行動をしてしまったりするような、衝動性の高い子どももいます。ルールやマナーなどを分かっていても、自分のやりたいことや気持ちをコントロールすることが難しいため、行動を止められると、癇癪につながることもあります。
お子さんの特性を理解しながら、お子さんそれぞれに合った対応方法を見つけていきましょう。
子どもが癇癪を起こしたときの対応
①安全を確保する
癇癪が起きると、その行動の激しさから思わず止めようとすることもあるかもしれません。無理に止めようとすると、かえって行動が激しくなり、止めに入った人を噛んだり、叩いたりすることもあります。子どもや周囲の人がけがをしないように、投げるとけがにつながるものは部屋の外に出す、机や椅子は部屋の隅に移動させるなど、まずは安全を確保することが大切です。
頭を壁に打ちつけるなどの自傷行為がみられる場合は、クッションや枕などを壁と頭の間に入れるとよいでしょう。
②落ち着ける場所に移動する
癇癪が起きた場所から別の場所に移動をすると、落ち着くことがあります。事前に落ち着いているときに、子どもが落ち着ける場所をあらかじめ決めておき、癇癪が起きたらそこに移動をすることで、場面を切り替えることができるでしょう。
③必要以上に干渉せず、落ち着くのを待つ
癇癪が起きると、周囲も焦ってしまいますが、周囲からの声掛けや身体接触が刺激となり、さらに癇癪がエスカレートしてしまうことがあります。子どもや周囲の安全を確保しながら、可能な限り、周囲も落ち着いて行動することが大切です。
④クールダウンする
気持ちを落ち着ける方法は子どもによってさまざまです。しかし、癇癪が起きてから、さまざまな方法を試したり、子どもに合った方法を探すことは難しいでしょう。癇癪を起こしていない普段の場面で、「深呼吸をする」「水を飲む」「『大丈夫』とつぶやく」など、さまざまな方法を試し、練習しておけるとよいでしょう。
⑤癇癪の原因から注意をそらす
おもちゃなど癇癪のきっかけとなったものが目に入ると、癇癪が長引いてしまったり、一度おさまった癇癪が再び起きてしまうことがあります。癇癪のきっかけとなったものから注意をそらすことができるよう、布をかけたり、部屋を移動したりしてみましょう。たとえば、積んでいた積み木が倒れて癇癪になったときに、布や箱で積み木を隠すことで、落ち着きやすくなることがあります。
⑥要求にこたえる場合はよく検討する
乳児期の生理的な欲求は、子どもにとってコミュニケーションの手段となります。そのため、子どもと周囲との信頼関係を築くためにも、こたえていくことが大切です。
一方で、幼児期以降の子どもで癇癪が起きると、その場をおさめようと、おもちゃやお菓子を渡したり、子どもの高めな要求にこたえてしまうことがあるかもしれません。しかし、安易に要求にこたえてしまうと、「癇癪を起こしたらいいことがある」と考えて、(図1 癇癪が起きやすくなってしまう仕組み)のように、似たような場面で癇癪が起きやすくなってしまうことがあります(こちらの内容に関しては、「ABA(応用行動分析学)」の記事でもご紹介しておりますので、ご参照ください。)。
また、癇癪を収める目的でおもちゃ等を買い与えるような対応は、癇癪が要求を叶えるための手段となってしまう可能性があるため、注意が必要です。
⑦落ち着くことができたらほめる
癇癪が起きているときだけではなく、癇癪が落ち着いたときの対応も重要なポイントの一つです。癇癪が少しでも落ち着いたら、すぐに「自分で落ち着けたね」「クールダウンできたね」などとほめる声掛けをすることが大切です。このようにほめる声掛けがあることで、子どもは自分なりのクールダウンの方法を獲得し、少しずつ癇癪の原因に直面しても、落ち着いた行動ができるようになっていきます(図2 ほめることによってクールダウンの方法が定着していく仕組み)。
⑧タイムアウト法(叩く・蹴る・物を叩く時)
癇癪への対応方法の1つに、「タイムアウト法」があります。この方法は、先ほどご紹介した「安全を確保する」「落ち着ける場所に移動する」「必要以上に干渉せず、落ち着くのを待つ」「落ち着くことができたらほめる」などの対応方法を組み合わせたものです。
まず、癇癪を起こしたときに、周りに物などの刺激の少ない場所に移動させて、落ち着くまで待ちます。物や周りの人を守りつつ、落ち着かせることが目的であり、「罰」を与えるわけではないので、「押し入れに入れる」のような、暗い場所や怖い場所に閉じ込めることは避けましょう。
タイムアウト中に少しでも落ち着いたら、すぐに「自分で落ち着けたね」などのほめる声掛けをしましょう。このほめる声掛けがないと、子どもは放置された、パパやママに嫌われた、と感じてしまう恐れがあります。
タイムアウト法は叩いたり、蹴ったり、物を投げたり、物を壊したりというような場合におすすめです。癇癪を起こしやすい場合には、「落ち着く場所」として、家庭のなかでタイムアウトの場所を決めておくと良いでしょう。
【原因別】子どもの癇癪に対して事前にできる対応方法
癇癪の原因になるものをあらかじめ取り除いておいたり、事前に対応方法を練習しておくことで、癇癪が少なくなったり、切り替えまでの時間が短くなることがあります。
①自分のやりたいことが思うようにできない場合の対応方法
自分のやりたいことが思うようにできない場合には、補助をしてやりたいことができるようになるとよいでしょう。ただし、補助されることを嫌がったり、補助だけではやりたいことが達成できなかったりすることもあると思います。そのような場合には、やりたかったこととは別にお子さんの得意な活動や好きなお手伝いを提示して、達成感を得られるようにすることも有効です。また、少しだけ手伝って、子どもができる部分や最後の部分は自分でやらせてあげることで、子どもの「自分でできた!」を増やすこともできるでしょう。
見通しと自分のやりたいことの折り合いをつけることが難しい場合には、スケジュール表などで見通しを分かりやすく伝えたり、「長い針が10になったらお片づけだよ」と活動前や終了時間の前に伝えるなど、子どもが見通しを持って活動できるような練習を積んでいくことも大切です。
②自分の気持ちをうまく伝えられない場合の対応方法
自分の気持ちをうまく伝えられない場合には、感情を具体的に示してみましょう。たとえば、「にっこり」「悲しい」「怒り」の3つの表情の写真や絵などを提示して、「今どんな気持ち?」と選ばせてみることもいいでしょう。
また、「お洋服、電車と車どっちにする?」などと選択肢を提示することも一つの方法です。子どもが自分で選択し、認めてもらえたという経験を積むことにつながっていくでしょう。
③怒りの対処方法をまだ身につけていない場合の対応方法
怒りへの対処法も、落ち着いているときに練習することがおすすめです。お茶を飲んだりすることが気持ちの切り替えになる場合もあれば、遊びに誘ってみることがいいこともあるかもしれません。お子さんによって、また同じ子どもでも場面や状況によって、どんな方法がいいかは異なる場合がありますので、対処方法をたくさん蓄積しておくのが良いでしょう。
まとめ
癇癪自体は、子どもにとっての自己表現の1つなので、決して悪いものではありません。今まで、泣いたり笑ったりしかできなかった自己表現の選択肢が増えた、成長のあかしであるととらえていただくと良いでしょう。そのため、癇癪に対して、保護者がイライラしすぎたり、厳しく叱ったりすることは逆効果となってしまう可能性があります。自分の意思や感情を表出することを抑え込んでしまう子どもになってしまうことを避けるため、あまり癇癪に対して直面しすぎず、保護者自身も少し場所を移動したり、時間を使って落ち着くまで待ったりすることも有効です。
癇癪がたびたび起こると、保護者や周囲も不安になったり、イライラしてしまったりすることがあるかと思います。一人で抱え込まず、家族や園・学校の先生、療育機関、医療機関などに相談していただけたらと思います。
<参考文献>
河原紀子(監修・執筆)(2018)0歳~6歳 子どもの発達と保育の本 第2版 Gakken.
小関俊祐(編著)(2024)子どもと一緒に取り組む 園生活での子どものストレス対処法 中央法規.
スタジオそら/発達障害療育研究所(2023) スタジオそら式 おうち療育メソッド1 行動編 主婦の友社.
スタジオそら/発達障害療育研究所(2024) スタジオそら式 おうち療育メソッド2 構造化編 主婦の友社.
田中康雄(監修)(2019)イラスト図解 発達障害の子どもの心と行動がわかる本 西東社.
渡辺弥生(監修)(2021)完全カラー図解 よくわかる発達心理学.





