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特集
注意欠如・多動症の子ども

ADHD(注意欠如・多動症)とは?特徴、診断と経過、支援について解説します

2023.11.13
  • ADHDの特徴
  • ADHDの診断と経過
  • ADHDの特徴に応じた支援
  • まとめ

ADHDの特徴

 ADHD(注意欠如・多動症)は、以前は「注意欠陥・多動性障害」と呼ばれていました。「障害」という意味合いよりも「症状」としてとらえるという観点から、現在は「注意欠如・多動症」と呼ばれています。

 

ADHDは、年齢に不相応に、注意がいろいろなものへどんどん移り変わってしまうような「注意の転導(不注意)」、なにかしらの刺激に突然反応してしまうような「衝動性」、あるいは落ち着きがない等の「多動性」といった特徴をもつ発達障害の1つです。

 

おなじADHDの診断がついていても、上記の3つの特徴すべてがみられる子どももいれば、1つだけの特徴を有している子どももいます。したがって、ADHDと聞くと多動のイメージがあるかもしれませんが、多動ではないADHDもいます。

 

 これらの特徴が12歳以前から認められ、学校や職場などの集団生活において困難が認められ、たとえば授業に集中できない(注意の転導、不注意)、先生が問題を言い終わっていないのに答えを言ってしまう(衝動性)、離席が目立つ(多動性)といった様子が見られるかもしれません。

 

ADHDの診断と経過

 ADHDの原因は十分に明らかになっていませんが、脳の神経伝達物質(シナプス)の異常が推定されており、小児の有病率は7~10%といわれています(村上, 2017)。また、男児の方が女児よりも3~5倍程度多いと考えられています。

 

学童期に診断を受ける場合が多いですが、成人後、はじめて診断がつくことも近年増えています。また、多動の特徴は学校生活等を経て、徐々に落ち着いていくと考えられていますが、注意の転導や衝動性は、大人になってからも変化がない場合が多いと考えられています(佐々木,2004)。

 

 これらの特性によって、学業や仕事の面で、ミスが多くなる傾向があります。ミスを指摘されることで、自己肯定感が低くなり、やる気を失ったり、無気力になったりする場合があります。このようなことが蓄積することで、うつ病、双極性障害、不安症などの精神疾患のリスクが高まる可能性も指摘されています(柏,2022)。

 

 また、知的障害を合併しているADHDの方もいますが、知的な遅れの認められないADHDの方もいます。ADHD自体の特徴もさまざまであるため、支援のあり方もさまざまとなります。特に子どもを対象として継続的な支援を展開するためには、個別の支援計画や個別の指導計画に基づく支援が不可欠です。

 

ADHDの特徴に応じた支援

 ADHDの特性から、ミスが多く叱られたり、落ち込んだりする経験が多いことが予測されることを踏まえると、「できているところ」に目を向けながら、自信を持たせ、モチベーションを上げるようなかかわりをすることが基本となります。

 

不注意の傾向の強い子どもには、1つの作業にじっくりと取り組ませるというよりも、あらかじめ国語と算数と工作の課題を用意しておいて、国語に飽きたら算数、算数に飽きたら工作、といったように、次々と興味にあわせて取り組む内容を変えるようなかかわりも有効です。

 

衝動性の高い子どもには、クイズ形式で1問1答のような課題に取り組ませることや、いわゆる100点を目指すような働きかけよりも、90点でいいから早く、数をこなすような働きかけをしたほうが、本人のモチベーションも高まり、結果的に作業量も多くなってほめられる機会が増えることも期待できます。

 

多動な子どもには、適宜、「あそこにある本を持ってきて」や「このプリントを渡してきて」というような立ち歩くことが必要な指示を出してあげるとよいでしょう。勝手に立ち歩くと問題行動になってしまいますが、指示に従って立ち歩けば、適応行動に位置付けることが可能です。

 

 このような観点をもちつつ、1人1人の特徴や、状況、環境等も考慮して継続的な支援を展開していくことが求められています。

 

まとめ

 ここでは、主に医学的側面から、ADHDについて紹介しました。多動や衝動性、注意の転導といった特徴は、誰しもが少なからず有しているものでもあります。

 

自分にも当てはまる特徴があったとしても、日常生活をおおよそ問題なく送れているようであれば、それほど気にしなくてもよいでしょう。同様に、成人の場合は、これまでやってきた自分なりのやり方で十分対応ができる場合も少なくありません。

 

特徴があるかどうか、ということよりも、困難感があるかどうか、という観点で確認いただくのが良いでしょう。

 

<引用文献・参考文献>

柏淳 (2022) ADHD における精神疾患の併存と鑑別 医学のあゆみ 280, p147–151.

村上佳津美(2017)注意欠如・多動症(ADHD)特性の理解 心身医学 57, p.27-38.

佐々木和義 (2004) ADHD:注意欠陥/多動性障害の子への治療と介入 金子書房

小関俊祐/発達障害療育研究所アドバイザー

桜美林大学心理・教育学系准教授。 日本認知・行動療法学会公認心理師対策委員及び倫理委員、一般社団法人公認心理師の会運営委員及び教育・特別支援部会長、日本ストレスマネジメント学会常任理事・事務局長を務める。 2019年より発達障害療育研究所・スタジオそら顧問として活動。

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