ADHDの特性がある子どもへの支援方法とは?特徴や、現れやすい問題行動についても解説①
2021.07.12- ADHD(注意欠如・多動症)の特徴
- ADHDの特性で問題行動ととられやすい行動
- ADHDの子どもに対する支援方法
- 子どもに対する直接的な働きかけ
- 子どもの周囲を介した間接的な働きかけ
- まとめ
ADHD(注意欠如・多動症)は、発達障害の1つであり、不注意(注意が逸れやすい)や多動性(落ち着きがない)、衝動性(衝動的に行動に移してしまう)といった特性があります。ADHDの特性がある子どもへの支援について、2回にわたって詳しく解説をします。
(ADHDについて原因、症状、支援など網羅的に解説しているこちらもご参照ください)
ADHD(注意欠如・多動症)の特徴
不注意、多動性、衝動性の3つがADHDの主な特徴ですが、ADHDのお子さんが全員、これら3つの特徴がみられるとは限りません。不注意の特徴だけが顕著であり、多動性や衝動性の特徴がみられないお子さんもいれば、不注意と多動性、多動性と衝動性のように2つの特徴があるお子さん、3つともみられるお子さんなど、さまざまです。
したがって、ADHDのお子さんに対して接する場合には、不注意、多動性、衝動性のどの特徴が当てはまるのか、あらかじめ確認することが求められます。
ADHDの特性で問題行動ととられやすい行動
ADHDは、脳の一部の機能障害といわれており、生まれつきある特徴です。しかしながら、未就学の段階では、多くの子どもたちに不注意や多動性、衝動性の特徴がみられるため、あまり目立たず過ごすお子さんも少なくありません。
それに対して、小学校に入学すると、おおよそ45分間、着席することが求められるようになります。そのため、多動性の特徴があるお子さんは、じっとしていることが苦手なので、離席するなどの行動が顕著に確認されるようになるかもしれません。
また、不注意のお子さんは、先生の指示を聞き漏らすことで行動が遅れたり、授業に集中できずに成績が悪くなったりする可能性もあります。ただし、すべての物事に注意が向かないわけではなく、ゲームや漫画、勉強も含む興味関心が高い物事には、しっかりと集中して取り組むことも可能です。
そして衝動性の高いお子さんは、先生の問いかけに対して、指名されていないのに答えてしまったり、順番を待てずに割り込むなどルールを守れなかったりすることが特徴として認められるかもしれません。
学校生活に慣れていくことで、おおよそ多動の特徴は落ち着く傾向にあり、離席の代わりに貧乏ゆすりなどの、やや落ち着いた様子で収まる傾向にあります。それに対して不注意は、注意が逸れている状態がなかなか行動として気付かれにくいため、結果的に指示などを理解できないことで、先生や保護者から注意を受けることが増えることにもつながってしまいます。衝動性も、急に道路に飛び出すような行動は収まりつつも、周りの様子を落ち着いて判断することができずに、衝動的に怒り出したり、手が出てしまったりするようなことも見られるかもしれません。
ADHDの子どもに対する支援方法
- 子どもに対する直接的な働きかけ
学校や家庭での生活を通して、徐々に自分の不注意や多動性、衝動性に気付き、コントロールできることが求められます。具体的には、「今は宿題する時間」などと心の中でつぶやく習慣をつけて、注意を向けるべき対象を明確に意識したり、衝動的に行動するのではなく、落ち着いて手順を考えて取り組むことを目指したりするような練習が有効です。この方法は「自己教示訓練」といい、学校の準備をしたり、料理をしたりするときのような、マルチタスク(複数の手続き)をこなさなければならない場面でも有効です。
また、多動性や衝動性の高さから、対人関係のトラブルに発展してしまうことも少なくありません。このような際の対処法を身に付けるものとして、ソーシャルスキルトレーニングがあります。自分のとるべき行動だけではなく、それに応じた相手の反応も予測しながら練習することによって、自分の行動のレパートリーを増やすとともに、相手の気持ちの理解を促したり、自分の行動と相手の反応の関連性に気付いたりすることができるようになると期待されています。トラブルが発生してしまった際には、「どうしたらよかったと思う?」「もし、同じことが起こったら、次は違う方法ができそう?」などと問いかけつつ、より良い行動が選択できるよう、支援していくことが良いでしょう。
子どもに対する直接的な働きかけは、一度その対処方法やスキルを身に付けてしまえば、長期的に有効であることが期待されます。その一方で、習得には一定の時間が必要であったり、試行錯誤しながら最適な方法を学習する必要があったりするため、なかなか簡単にはいきません。
- 子どもの周囲を介した間接的な働きかけ
子どもに対する直接的な働きかけは一定の時間が必要で簡単には身に着けられないのに対して、ある程度すぐに実施可能で、一定の効果が期待できる方法として、子どもの周囲を介した間接的な働きかけを行う、環境調整という方法があります。環境調整とは、子どもの周囲の環境、すなわち学習環境、生活環境などを、子どもの良い行動を引き出しやすくするために調整する方法です。
たとえば、物が多くあって気が逸れやすく、勉強に集中しにくいお子さんに対しては、周りにおもちゃや漫画などの注意をひきやすい物がない、上から布を被せたりして目に入りらないような部屋作りをすることが推奨されます。あるいは、壁に向かって勉強机を配置し、テレビなどが目に入りにくい部屋作りをしてあげるとよいでしょう。最初のうちは、1問ごと、あるいは2~3分に1回など、「できてるね!」「頑張ってるね!」と、注意が勉強に向いているうちに声をかけてほめることも有効です。
同様に、イライラすると衝動的に物を投げてしまうようなお子さんの場合には、壊れやすい物や当たると危険な物はあらかじめ手の届かないところにしまうような習慣をつけたり、多動のお子さんには、椅子をがたがたしにくいように足が床につかない椅子を用いたり、こまめに体操の時間など、体を動かす時間を設定したりすることも有効です。
学校の教室という環境では、座席を1番前にセッティングしてあげると、授業中にクラスメイトや掲示物などの目に入るものが少なくなり、授業に集中しやすくなるかもしれません。
また、家庭でも学校でも、細かく励ましや賞賛の声かけをしつつ指示を出すことで、指示を聞き逃してしまうということも少なくなり、結果的に家庭での作業や授業の進行についていきやすくなるでしょう。また、子どもの頑張りに対して「いいね!その調子!」とその都度ほめたり、「次の答えな~んだ?」、「今は何の時間だっけ?」などの取り組むべき行動がわかるような声かけしたりすることによって、注意の逸れやすさや衝動性による不適切な行動をするきっかけが減り、望ましい行動が継続しやすくなります。
衝動性によって順番を守ることが苦手なお子さんに対しては、家庭では兄姉など、順番を守れている子の後ろに並ばせて真似させたり、順番を待つ場所に印をつけて明確にしたりすることも工夫の1つです。
多動性の特徴をもつ子どもは、動いていなければ気分的に落ち着かないという場合が多いため、何らかの動く時間を設けてあげるとよいでしょう。たとえば、食事の際の配膳や授業のプリントを配るなどの役割を与えて、動いてもよい時間を設けてあげるとよいかもしれません。多動性による不適切にみえる行動をなくすだけでなく、「お手伝い行動」としてほめる機会となるので、お子さんにとっても保護者や先生にとっても嬉しい出来事になります。
このように環境を調整するということも重要ですが、多動性や衝動性の特徴は、本人や友達の怪我、事故などにつながらない行動であれば、子どもが自分に自信をなくしてしまわないように、些細なことはあまりとり上げず、よい行動に重きをおいて声をかけることも必要です。
まとめ
ADHDの特徴と、その支援方法として、自己教示訓練やソーシャルスキルトレーニング、環境調整について紹介しました。実際には、お子さんの年齢や理解度などに応じて、支援方法を選択していくことになるでしょう。いずれにしても重要なのは、お子さんのチャレンジ精神を養いつつ、できたところをほめることで、自信を持たせていくことが良いでしょう。