ADHDの特性がある子どもへの支援方法とは?特徴や、現れやすい問題行動についても解説
2026.10.12- ADHD(注意欠如・多動症)の特徴
- 【時期別】ADHDの問題行動ととられやすい行動
- ・未就学児期の様子
- ・小学校入学時の様子
- ・その後の傾向
- ADHDの子どもに対する支援の心構え
- ・子どもに対する直接的な働きかけと、間接的な働きかけ
- ・自信をなくしてしまわないために
- 不注意の高さによって生じうる問題と対応・支援方法
- ・時間に着目した支援
- ・量に着目した支援
- ・環境調整によって集中しやすくする
- 多動性の高さによって生じうる問題と対応・支援方法
- ・環境調整によってコントロールしやすくする
- ・気づきを促し、コントロールできる力を養う
- ・動く時間を設ける
- 衝動性の高さによって生じうる問題と対応・支援方法
- ・自分でコントロールできた経験を積む
- ・環境調整による支援
- 不注意・多動性・衝動性に共通するその他の支援方法
- ・自己教示訓練
- ・ソーシャルスキルトレーニング
- ・構造化
- まとめ
ADHD(注意欠如・多動症)は、発達障害(神経発達症)の1つであり、不注意(注意が逸れやすい)や多動性(落ち着きがない)、衝動性(衝動的に行動に移してしまう)といった特性があります。ADHDの特性がある子どもへの支援について、詳しく解説をします。
(ADHDについて原因、症状などを詳しく解説しているこちらもご参照ください)
ADHD(注意欠如・多動症)の特徴
不注意、多動性、衝動性の3つがADHDの主な特徴ですが、ADHDのお子さんが全員、これら3つの特徴がみられるとは限りません。不注意の特徴だけが顕著であり、多動性や衝動性の特徴がみられないお子さんもいれば、不注意と多動性、多動性と衝動性のように2つの特徴があるお子さん、3つともみられるお子さんなど、さまざまです。
したがって、ADHDのお子さんに対して接する場合には、不注意、多動性、衝動性のどの特徴が当てはまるのか、あらかじめ確認することが求められます。
【時期別】ADHDの問題行動ととられやすい行動
未就学児期の様子
未就学の段階では、多くの子どもたちに不注意や多動性、衝動性の特徴がみられるため、あまり目立たず過ごすお子さんも少なくありません。
小学校入学時の様子
小学校に入学すると、おおよそ45分間、着席することが求められるようになります。そのため、多動性の特徴があるお子さんは、じっとしていることが苦手なので、離席するなどの行動が顕著に確認されるようになるかもしれません。
また、不注意のお子さんは、先生の指示を聞き漏らすことで行動が遅れたり、授業に集中できずに成績が悪くなったりする可能性もあります。ただし、すべての物事に注意が向かないわけではなく、ゲームや漫画、勉強も含む興味関心が高い物事には、しっかりと集中して取り組むことも可能です。
そして衝動性の高いお子さんは、先生の問いかけに対して、指名されていないのに答えてしまったり、順番を待てずに割り込むなどルールを守れなかったりすることが特徴として認められるかもしれません。
その後の傾向
学校生活に慣れていくことで、おおよそ多動の特徴は落ち着く傾向にあり、離席の代わりに貧乏ゆすりなどの、やや落ち着いた行動で収まる傾向にあります。それに対して不注意は、注意が逸れている状態がなかなか行動として気づかれにくいため、結果的に指示などを理解できないことで、先生や保護者から注意を受けることが増えることにもつながってしまいます。衝動性も、急に道路に飛び出すような行動は収まりつつも、周りの様子を落ち着いて判断することができずに、衝動的に怒り出したり、手が出てしまったりするようなことも見られるかもしれません。
ADHDの子どもに対する支援の心構え
子どもに対する直接的な働きかけと、間接的な働きかけ
子どもに対する直接的な働きかけによって、徐々に自分の不注意や多動性、衝動性に気づき、コントロールできるようになることが求められます。一度対処方法やスキルを身につけてしまえば長期的に有効であることが期待される一方で、習得には一定の時間や、試行錯誤する必要があります。
子どもに対する直接的な働きかけに対して、ある程度すぐに実施可能で、一定の効果が期待できる方法として、子どもの周囲を介した間接的な働きかけを行う、環境調整という方法があります。環境調整とは、子どもの周囲の環境、すなわち学習環境、生活環境などを、子どものよい行動を引き出しやすくするために調整する方法です。
自信をなくしてしまわないために
さまざまな働きかけによって困りごとを減らすことも重要ですが、本人や友達の怪我、事故などにつながらない行動であれば、子どもが自分に自信をなくしてしまわないように、些細なことはあまりとり上げず、よい行動に重きをおいて声をかけることも必要です。
不注意の高さによって生じうる問題と対応・支援方法
不注意(注意の欠如、注意の転動性)は、勉強や作業などの課題に対する集中力が持続しにくく、注意が逸れてしまうという特性です。これ自体は一般の方にも認められやすい特徴ですが、「大事な話をしているのに、外の音が気になって話が入ってこない」などのように、重要な場面でも、集中することが困難で、注意が逸れてしまうのがADHDの特性と言えるでしょう。
未就学のお子さんの場合には、もともとの集中力はそれほど高くなく、おおよそ年齢×1~2分程度が集中して取り組める時間の目安になります。もちろん、好きな活動は集中力も高まりますし、苦手な活動やうるさい場所、さまざまな興味を引くものがたくさんある状況などでは集中力も低くなる傾向にあります。小学校に入学すると、1つの授業は45分単位になりますが、先生の話を聞いたり、問題を解いたり、発表したりと、さまざまな活動が組み合わされ、集中すべきものを切り替えながら、授業が展開されていきます。
このような活動や授業、勉強に対する注意が逸れやすい場合には、「どの程度であれば注意が持続しやすいか」を見極めて、対応することが望まれます。その際、「時間」に着目して支援を行うか、課題などの「量」に着目して支援を行うか、お子さんの特徴や様子、理解度に応じて選択ができるとより良いでしょう。
時間に着目した支援
時間に着目した支援を行う場合には、集中の持続が5分程度なのか10分程度なのか、課題によっても差異が生じることを前提に見極める必要があります。
キッチンタイマーや時計を使うことが有効ですが、時間の変化が気になってしまう場合などにはあまりお勧めできません。また、時間の感覚も十分に備わっていない場合が少なくないので、時間を基準とする準備が整っているか、確認することが必要です。小学校入学後や、成人してからも、「いつまでに終らせるように」といった時間を基準にした指示を受けやすいので、徐々に身につけていけると良いでしょう。
量に着目した支援
時間に対して、量は確認しやすく、分かりやすいので、基準としては用いやすいでしょう。問題3問、漢字5文字など、「確実に取り組める量」を提示し、できたときにはしっかりとほめることが大事です。
集中力を養いたいときには、問題に正解したかどうかではなく、「3問集中して取り組めたね!」ということをフィードバックすることが大事です。集中しているときの様子として、視線がノートに向いているか、鉛筆を持ったままか、椅子に座って両足が床についているかど、具体的な行動として集中している状態を確認することも大切です。
環境調整によって集中しやすくする
環境調整の具体例としては、たとえば、物が多くあって気が逸れやすく、勉強に集中しにくいお子さんに対しては、周りにおもちゃなどの注意をひきやすい物がない、上から布を被せたりして目に入らないような部屋作りをすることが推奨されます。あるいは、壁に向かって勉強机を配置し、目に入りにくい部屋作りをしてあげるとよいでしょう。最初のうちは、1問ごと、あるいは2~3分に1回など、「頑張ってるね!」と、注意が勉強に向いているうちに声をかけてほめることも有効です。
また、学校の教室という環境では、座席を1番前にセッティングしてあげると、授業中にクラスメイトや掲示物などの目に入るものが少なくなり、授業に集中しやすくなるかもしれません。
家庭でも学校でも、細かく励ましや賞賛の声かけをしつつ指示を出すことで、指示を聞き逃してしまうということも少なくなり、結果的に家庭での作業や授業の進行についていきやすくなるでしょう。また、子どもの頑張りに対して「いいね!その調子!」とその都度ほめたり、「次の答えな~んだ?」などの取り組むべき行動がわかるような声かけをしたりすることによって、注意の逸れやすさや衝動性による不適切な行動をするきっかけが減り、望ましい行動が継続しやすくなります。
多動性の高さによって生じうる問題と対応・支援方法
多動性は、貧乏ゆすりのようにじっとしていられず、いつも身体のどこかが動いていたり、あるいは離席してしまったりするような特徴を指します。あるいは、しゃべりすぎてしまうような多弁も、多動性の特徴の1つと考えられています。
小学校入学後は、じっとすることが求められる場面が一気に増えるため、小学校入学後に、多動性の特徴が指摘される場合も少なくありませんが、学年が上がるにつれて徐々に落ち着く傾向にあると考えられています。
環境調整によってコントロールしやすくする
多動性への対応として、まずは椅子や机などの環境を調整してみましょう。椅子の高さが合わず、足をぶらぶらさせてしまう状態だと、動きやすく、多動性もコントロールしにくくなります。保護者が付き添うことができるのであれば、優しく肩や背中に手を置き、立ち歩きしにくくすることも有効です。力を入れて押さえつけることは避けましょう。
気づきを促し、コントロールできる力を養う
多動や多弁などの場合には、「足を床に着けようか」「いったん深呼吸してみよう」などと、具体的な行動を提案してみたり、口に指をあてて「しー」と促したりしつつ、子どもが多動や多弁の状態に気づき、行動を自分で制止することができたらほめる、ということも大切です。自分の状態に対する気づきを促し、コントロールができるよう、少しずつ取り組んでいきましょう。
動く時間を設ける
多動性の特徴をもつ子どもは、動いていなければ気分的に落ち着かないという場合が多いため、こまめに体操の時間を挟むなど何らかの動く時間を設けてあげるとよいでしょう。たとえば、食事の際の配膳や授業のプリントを配るなどの役割を与えてあげるとよいかもしれません。多動性による不適切にみえる行動をなくすだけでなく、「お手伝い行動」としてほめる機会にもなります。
衝動性の高さによって生じうる問題と対応・支援方法
衝動性は、見たり聞いたり感じたり考えたりしたら、すぐに行動に移してしまうという特性です。この特性は、ある程度ほとんどの人が持ち合わせていますが、時や場所、状況を選ばずに、すぐに行動に移してしまうことによって、問題となる可能性が出てきます。
たとえば、「友達が話している様子を見て、自分の悪口を言っている!と思いこんで衝動的にたたいてしまう」とか、「授業中、先生の問いかけに対して、指名されていないのに答えを言ってしまう」などの様子が見られるかもしれません。
一般の方の衝動性の高さは、「我慢しようと思えば我慢できる」ことが多いですが、ADHDの特性としての衝動性は、これらのようなコントロールが困難な場合が多いです。それによって、叱られてしまう経験も多くなりがちです。
衝動性の高さをすぐにコントロールできるようになるのは難しいため、少しずつ、「自分でコントロールできた!」という経験を積んでいくことが重要です。
自分でコントロールできた経験を積む
まず、衝動的に行動しやすい場面をいくつかピックアップしてみましょう。
たとえば、「弟がおもちゃで遊んでいるときに、弟をたたいておもちゃを取り上げてしまう」といった場面があるとします。次に、たたいて取り上げてしまう前に、「弟がおもちゃで遊んでいたらどうする?」などの対処方法を、あらかじめ一緒に考えてみましょう。お子さんが自分で解決策を考えられれば良いですが、難しい場合には、「貸してって言ってみたらどうなるかな?」などとアドバイスをしてみるのも良いでしょう。「あとでね」などと断られた場合の対応まで考えられると、なお良いです。そして考えた解決策を実行してみて、「できた」経験を積みましょう。最初のうちは、お子さんと保護者の方が一緒に「貸して」と言ってみることも良いでしょう。
重要なことは、衝動的に行動するのではなく、計画的に行動を実行することができ、良い結果が得られたという経験を積むことです。ここでいう良い結果というのは、おもちゃを貸してもらえたことだけでなく、落ち着いて行動できたことを保護者の方にほめられ、自信を持つことができた、ということが重要です。
環境調整による支援
衝動的に物を投げてしまうようなお子さんの場合には、危険な物はあらかじめ手の届かないところにしまうような習慣をつけることが有効です。
また、衝動性によって順番を守ることが苦手なお子さんに対しては、順番を守れている子の後ろに並ばせて真似させたり、順番を待つ場所に印をつけて明確にしたりすることも工夫の1つです。
さらに不注意の高さに対する環境調整と同様に、学校では一番前の席にする、細かい励ましや具体的な声掛けをする、といった対応が効果的です。注意の逸れやすさや衝動性による不適切な行動をするきっかけが減り、望ましい行動が継続しやすくなります。
不注意・多動性・衝動性に共通するその他の支援方法
ADHDの特性として挙げられる、不注意、多動性、衝動性に対する対応について紹介しましたが、他にも様々な手続きによって、うまく対処できる可能性が高まる場合もあります。1つの手続きにこだわって対応し続けることよりも、いろいろな方法を試してみて、お子さんにとって効果的な、よりよい方法を探していくような関わり方がお勧めです。
自己教示訓練
「今は宿題する時間」などと心の中でつぶやく習慣をつけて、注意を向けるべき対象を明確に意識したり、衝動的に行動するのではなく、落ち着いて手順を考えて取り組むことを目指したりするような練習が有効です。学校の準備をしたり、料理をしたりするときのような、マルチタスク(複数の手続き)をこなさなければならない場面でも有効です。
ソーシャルスキルトレーニング
対人関係トラブルの対処法を身につけるものとして、ソーシャルスキルトレーニングがあります。自分のとるべき型にはまった行動を理解するだけではなく、学習した対人関係上のスキルを相手の反応も予測しながら練習することによって、自分の行動のレパートリーを増やすとともに、相手の気持ちの理解を促したり、自分の行動と相手の反応の関連性に気づいたりすることができるようになると期待されています。トラブルが発生してしまった際には、「どうしたらよかったと思う?」などと問いかけつつ、よりよい行動が選択できるよう、支援していくことが良いでしょう。
構造化
いつ、どこで、どのような行動をとると良いのかを、お子さん自身が気づくことができるように環境を整える方法として構造化があります。おおよそ、場所の構造化、時間の構造化、手順の構造化がよく用いられる方法です。場所の構造化とは、ここは遊ぶ場所、ここはご飯を食べるところ、と場所を分けることによって、騒いでいい場所、遊んでいい場所など、OKなところを示す方法です。時間の構造化とは、何時まで、あるいは何分くらい、その活動を取り組むことができるのかを示すことで、見通しをもって行動ができるように促す方法です。手順の構造化とは、いくつかの手続きがあるもの(たとえば、寝る準備など)を1つ1つの行動に分けて整理をし(たとえば、①歯を磨く、②トイレに行く、③おやすみをいう、④布団に入る、など)、自分で確認しながら行動ができるように促す手続きです。構造化によって、お子さんの適切な行動を引き出し、「できた!」という経験を養いやすくすることが期待できます。(構造化について詳しく解説しているこちらもご参照ください)
まとめ
ADHDの特性として挙げられる、不注意、多動性、衝動性に対する対応は、正解となる方法が決まっている、というよりも、お子さんにとっていい変化が見られた方法が、結果的に正解となる方法である、というように考えて、焦らず試行錯誤してみましょう。また、これらの方法はすぐに大きな効果が出るような性質のものではありません。うまく行かない場合でも、自分や誰かを責めるのではなく、また次の機会に繋げていくことが重要です。






