ディスレクシアとは?特徴や初期症状、見え方、合理的配慮の事例について解説
2026.06.08- ディスレクシアとは
- ディスレクシアの特徴と見え方
- ディスレクシアの初期症状
- 未就学児(3-6歳頃)でみられる初期症状
- 就学後(小学生~中学生)でみられる初期症状
- 成人後でみられる初期症状
- ディスレクシアの原因・メカニズム
- ディスレクシアのある子どもへの対応
- 家庭でできること
- 学校や社会での合理的配慮
- 合理的配慮とは
- 学校での合理的配慮の例
- 社会での合理的配慮の例
- ディスレクシアの相談先
- まとめ
ディスレクシアとは
ディスレクシアとは、知的な問題や視力、聴力などに問題がないにもかかわらず、文字を読むことの正確さ、速度、理解度に困難を感じる神経発達症の1つの状態と定義づけられています。精神疾患に関する世界的な診断基準を示しているDSM-5-TRでは、「限局性学習症(Specific Learning Disorder/SLD)」の診断基準の1つと位置付けられており、「読字の困難」に相当する状態を指す用語です。なお、失読症は英語で「Dyslexia(ディスレクシア)」と訳しますが、医学や心理学等の文脈では異なる概念を指すため、日本語では「ディスレクシア」や「読字障害」と記して区別します。失読症が脳損傷等による後天的な高次脳機能障害であるのに対し、ディスレクシアは先天的な発達障害です。
ディスレクシアの特徴と見え方
ディスレクシア(読字障害)は、知能が正常範囲にあるのに文字を読むことに特異的な困難を示す発達障害であり、主に音韻処理や視覚的文字認識の弱さが特徴です。また、似ている言葉であり、ディスレクシアと同じくSLD(LD)の診断基準の1つにディスグラフィア(書字障害)やディスカリキュア(算数障害)があります。ディスグラフィア(書字障害)は、知能や感覚に問題がないにもかかわらず、手書きや綴り、文章構成に特異的な困難を抱えるという特徴があります。手先の不器用さや、目と手の連携(協応)の苦手さなどが影響していると考えられます。一方ディスカリキュア(算数障害)は、数の概念理解や計算、数学的推論に特異的な困難を抱えるという特徴があります。これらは複数の特徴を併せ持つ場合もあります。ディスレクシアを背景として、文字を読み取ることが困難なために、二次的な障害としてディスグラフィアやディスカリキュアの特徴が認められる場合もあります。
音韻処理とは、言語の最小音単位(音素)を認識したり操作したりする認知機能を指します。「文字と音のマッチングが苦手」とイメージいただくと良いでしょう。
- 分解(セグメンテーション): 「はね」を「は」と「ね」の2つの音に分けることが苦手
- 合成(ブレンディング): 「は」と「ね」を聞いて「はね」と素早く組み合わせられないため、単語として認識しにくい
- 操作(マニピュレーション): 「はね」の最初の音を「ほ」に変えて「ほね」と言い換える課題でつまずく
このような音韻処理が苦手なために、「りんご」を「り」「ん」「ご」と逐次読みしたり、似た音の文字(「は」と「ほ」、「ね」と「ぬ」)を混同したりします。そのため、流暢な読字が難しくなります。
視覚的文字認識は、目で見た文字の形や特徴を素早く識別し、文字を意味のある記号として脳が処理する認知機能です。「文字を目で見て正しく理解するのが苦手」とイメージいただくと良いでしょう。ディスレクシアではこの視覚的な処理が遅く、似た文字の混同が生じやすいのが特徴です。また、文字が歪んで見えたり(らせん状、3D浮き出し、左右反転、点描のように)、にじんだりぼやけたりしているように見える方もいます。(図1)
これによって行の飛ばしや逆読みが発生しやすくなります。加えて、視覚的な処理が難しいために、(図2)のように、枠からはみ出して書いたり、鏡文字になったりするなどの書字の問題が生じることも起こり得ます。
ディスレクシアの初期症状
ディスレクシアの初期症状、といっても、実際にはディスレクシアを含む発達障害は「非進行性(どんどん悪化するような類のものではない)」とされています。したがって、初期や中期で症状が異なる、ということは稀であり、ディスレクシアに気づきやすい「兆候」と考えていただくと良いでしょう。
ディスレクシアの可能性が考えられる兆候は年齢によって現れ方が異なり、早期発見が支援の鍵となります。おおよそ、就学前に認められやすい兆候は言語発達に関連し、就学後は学業面、成人後は日常生活で顕著になることが多いでしょう。
未就学児(3-6歳頃)
リズムやしりとりなど、言葉を使った遊びが苦手、ひらがななど文字を覚えるのに時間がかかる、言葉を話すのに遅れが見られる、文字を指でなぞっても形を記憶できない
就学後(小学生~中学生)
音読が極端に遅くつっかえる、似た文字(「さ」と「ち」)の混同、漢字の書き取りミスが多い、文章の内容理解に時間がかかり要約できない、宿題の読み書きを強く嫌がる
成人後
読書速度が遅く、長文を読むと疲弊してしまう、メールや報告書に誤字脱字が多い、会議の議事録作成等が困難、人の名前や専門用語の漢字を覚えられない、音読を避ける
ディスレクシアの原因・メカニズム
ディスレクシアの主な原因として、神経生物学的要因による脳機能の発達の遅れが影響していると考えられています。そのなかでも特に、音韻処理と視覚認知(視覚的文字認識)のつまずきが大きな影響を及ぼしていると考えられています。すなわち、主に生まれつきの脳の働き方によって、文字を音に変えたり形を覚えたりすることをうまく連動させながら処理することが困難であると考えられます。
音韻処理が苦手な理由としては、脳の左側にある音を司るエリアの機能が弱く、文字を見て「はね」を「は」と「ね」の音に素早く分けることが困難であり、その結果として読むのが遅くなると考えられています。
視覚認知(視覚的文字認識)が苦手な理由としては、脳の文字認識エリア(後頭部や頭頂部)が活発に働かないために、「は」と「ほ」、「ち」と「さ」などを混同してしまうことや、文章全体を一気に把握することが困難であったりすることが影響していると考えられています。
これらの苦手さが組み合わさることによって、知的な水準には遅れが認められないにもかかわらず、読みだけ、書きだけ、あるいは読み書きが苦手な状態になると考えられています。
ディスレクシアのある子どもへの対応
ディスレクシアによって生じる問題や困難感は、努力の問題でカバーできる要素ではないため、一般的な漢字ドリルや計算ドリルのような、「繰り返し何度も練習する」というアプローチでは、効果が見られない場合が少なくありません。(図3)のように、視覚的な理解の苦手さを補うために、教科書の読むべき行だけが見えるようにするようなツールを用いることで、読み飛ばしを避けたり、どこを読んでいるのかわからなくなったりすることを避けることができます。ほかにも、マス目の大きなノートを使って文字を書く、ひっ算するときのケタがそろうような補助線のあるノートを使うなど、用いる教材の工夫でできることが増える場合もあります。また、小学校中学年以上であれば、これまでにすでに習得しているひらがな、カタカナ、漢字などはどのようにして読み書きを身につけたか、といった情報を参考に、すでに成果が確認できている方法を用いて新たな課題に対応することが推奨されます。
また、一般的な学習とも共通して、1回の学習でたくさんのことを理解することは非常に困難であることを考えると、継続的な取り組みが不可欠になります。そのため、一生懸命頑張る、という雰囲気よりも、楽しみながら取り組むような工夫が必要でしょう。「読めないと笑われるよ」などのネガティブなメッセージよりも、「文字が読めるようになったらマンガとかも楽しく読めるね」といったようなポジティブなメッセージを伝えていくことが大切です。このような観点に加えて、家庭と園や学校での対応がおおよそ一貫していると、子どもの安心にもつながり、理解の促進にもつながると期待できます。
<家庭でできること>
- 読み聞かせや音声アプリで本に楽しみながら慣れさせる
- テレビやネット動画は字幕付きにして、文字が目に入りやすいようにする
- ひらがな中心の短いメモやリストを使い、指差し読みを習慣化
- しりとり遊びで文字の音に対する意識を育て、ほめて自信を養う
学校や社会での合理的配慮
<合理的配慮とは>
障害者差別解消法に基づいて、障害特性による不利益を解消することを目的とし、個人に最適化された支援を提供したり、提供するために検討を行ったりすることを指します。2016年施行の障害者差別解消法においては、学校などの公的機関での合理的配慮が義務付けられていましたが、2024年4月1日から民間企業においても合理的配慮の提供が義務化されました。
<学校での合理的配慮の例>
- 教科書やプリントを読み上げたり、読み上げるためのソフトを用いたりすることによる音声化
- 板書やノートなどをタブレットにて撮影することの許可
- テストを穴埋め式や口頭解答に変更
- 事前に授業プリントを渡しておく、板書を行うことの支援、長文を短く分割して提示
<社会での合理的配慮の例>
- 職場で報告書等を音声入力ツールやPCの読み上げ機能を使用して作成
- 試験で時間延長や文字拡大
- 面接など、読解不要の形式での評価
- 日常生活で電子書籍や音声ガイド活用の推奨
ディスレクシアの相談先
ディスレクシアの可能性を感じたり、読字などのつまずきが顕著であったりする場合、すでに学校に通っているようであれば、「ことばの教室」などの学校内で支援を実施している先生に相談してみると良いでしょう。「言語聴覚士」などの資格を持つ専門の先生が、どのようなところにつまずきがあるのか、どのような支援方法が有効であると期待できるのか、相談にのってくれるはずです。まずは、「ことばの教室」を利用できるか、担任の先生などに相談してみてください。
そのほか、まずはかかりつけの小児科などに相談し、近隣の発達外来などを紹介してもらうことも可能です。地域の保健センターや子育て支援課、福祉課などでも、どの機関にかかったらいいか、相談を受け付けてもらえるでしょう。いずれにおいても、医療にかかったらいいかどうか、といったところから、相談に乗ってもらえるはずです。詳しくは「子どもが発達障害かもと思ったら(https://studiosora.jp/column/803/)」をご参照ください。
まとめ
今回はディスレクシアについて、その特徴や対応方法について紹介しました。早期に適切な支援を受けることで、文字に対する過剰な苦手意識を持たないようサポートするためにも、まずは相談しやすいところにアクセスしてみると良いでしょう。





