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特集
小学校の勉強についていけない学習障害児

学習障害(限局性学習障害,LD)とは?発見のポイントや症状、支援方法を解説します。

2018.08.13
  • 学校現場における学習障害児の実態
  • 学習障害の定義 <Learning Disabilities>
  • 「学習障害」から「限局性学習障害/限局性学習症」へ
  • 学習障害の人がもつ困難さ
  • ディスレクシア(Dyslexia)について
  • 学習障害の早期発見とその課題
  • 二次的障害
  • 合理的配慮と支援の工夫

(アメリカ精神医学会の(診断マニュアル第Ⅳ版)DSM-Ⅳ-TRでは「学習障害」とされていましたが、最新版のDSM-5によって診断名が変更され、現在「限局性学習障害/限局性学習症(Specific Learning Disorders)」になりました。このコラムでは前者の方が一般的に使用されているため「学習障害」と表記させていただきます。)

 

学校現場における学習障害児の実態

2012年に実施された文部科学省の「通常学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」における調査結果では、「学習面で著しい困難を示す」児童生徒の割合は4.5%と推定されています。この結果からは小学校に学習障害と思われる児童が、1教室に30人の児童がいた場合、1人くらいには学習に著しい困難を示す児童がいるということが調査により示されました。

また、この調査では、支援の報告に関しても報告されており、学習困難を示している子どもたちに対して、「授業時間以外の個別の配慮・支援をおこなっていますか」の問に対して「行っていない」の回答が67.1%であったと報告されています。つまり、約半数の子どもが支援をうけていない実態が明らかとされました。この調査では、「学習面で著しい困難を示す」児童がどれくらい学級にいるのかが報告がされていますが、「かなり困難」「やや困難」「かなり苦手」というレベルの子どもたちが含まれていませんでした。このことから、学級の中で学習につまずいている子どもがもっと多いのではないかということが懸念されています。(河野,2017)

学習面でつまずきがみられた場合、早めに支援を受けられるように環境調整は必要とされます。支援がうけられない場合、学習への苦手意識が強まり、勉強をしなくなることで学業困難に陥ることも少なくありません。子どもがどんなに頑張っても獲得できない学習面のスキルは努力不足ではなく、学習障害が関係しているかもしれません。

 

学習障害の定義 <Learning Disabilities>

学習障害の定義には、文部科学省が定義したものと、DSM-5やICD-10の医学的判断による定義があります。教育領域で使用されれる、Learning Disabilitiesの学習障害とLearning Disorder の概念は似ている領域は含まれていますが、まったく同じ概念ではありません。教育領域で使用されるLearning Disabilitiesのほうが医学的判断に用いられるLearningDisorderより「聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力」と広い領域の障害が含まれています。一方で、医学的判断として用いられるアメリカ精神医学会の診断マニュアルであるDSM-5では「読み、書き、計算」と領域が限定されています。(小林・杉山・宮本・前川,1999)

 

・文部科学省の学習障害の定義

「学習障害とは、基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない。」と定義されています。

 

・アメリカ精神医学会の診断マニュアル DSM-5の定義

「学習や学業的技能の使用に困難があり、その困難を対象とした介入が提供されているにもかかわらず、以下の症状の少なくとも6ヶ月持続していることで明らかになる」とされています。DSM-5では「歴年齢から推定される習得度との間に量的に顕著な乖離を示し、日常や学業及び職業を遂行する際に障害を認める水準であることが限局性学習障害の条件とされています。

 

「学習障害」から「限局性学習障害/限局性学習症」へ

限局性学習障害はアメリカ精神医学会の(診断マニュアル第Ⅳ版)DSM-Ⅳ-TRにて、「学習障害」として使われていましたが、最新版のDSM-5によって診断名が変更され、 現在、限局性学習障害/限局性学習症(Specific Learning Disorders)と変わりました。

DSM-5では、限局性学習障害の定義には「読み」「書き」「計算」に限定されています。

診断基準によって診断名が異なるところはありますが、学習面で子どもが何らかの問題を抱えているということには変わりはありません。(小枝,2015)

 

限局性学習障害の中には、

読字の障害:読字理解、速度、正確性における特定の問題

書字表出の障害:文法、文構成、文章作成における特定の問題

算数の障害:計算、数字、記号の模写、それらの理解における特定の問題

の3つに分類されています。

 

学習障害の人がもつ困難さ

①「聞く」ことへの困難さ

・全体の指示や説明を聞くことが難しい

・正確な音として聞き取ることが難しい

・聞いた内容を記憶にとどめておくことが難しい

・意味を理解することが難しい

 

②「話す」ことへの困難さ

・頭に浮かんだことを端的に話すことが難しい

・話しているうちに内容がそれてしまう

 

③「読む」ことへの困難さ 

・困難な状況としては、読み飛ばしや読み替えによる間違いが多い

・文字は読めても単語や文として読むことが難しい

・内容を理解することが難しい

 

④「書く」ことへの困難さ

・単語を正確に書くことが難しい

・板書を書き写すのに時間がかかる

主語・述語などの文法構造の理解が難しい

・助詞の誤用が多い

・文章(作文)を書くことが難しい

 

⑤「計算する」ことへの困難さ

・数字を読んだり、描いたりすることに困難がみられる。

・筆算が難しい

 

⑥「推論する」ことへの難しさ

・文章題を解くことに困難がある

表やグラフを含む問題を解くことに困難がある

・図形を理解したり、図形を描いたりすることが困難である

(柘植,2016)

 

ディスレクシア(Dyslexia)について

ディスレクシアとは

「発達性読み書き障害」という意味です。ディスレクシアを文字が読めないと表現されることがありますが、そうではなく「よく間違える」「よく間違えやすい」のです

 

ディスレクシアの原因

音韻処理という脳の機能障害であると考えられるようになったとされています。DSM-5 では神経発達障害の限局性学習障害に分類されていて、その中の読字障害にあたります。

 

ディスレクシアにみられる困難さ

一文字読むのに時間がかかってしまうことや間違えることもあるといった状態では、読むだけでは疲れてしまうこともあります。疲れてしまって、意味を把握するまでには至らないこともあり、読書が嫌いになったり、読書への拒否感が生じてしまうことがあります。

 

ディスレクシアの初期症状

[読字障害:初期症状]

・ 幼児期には文字に興味がないし、覚えようとしない

・ 文字を一つ一つ拾って読む

・ 話あるいは文節の途中で区切ってしまう

・ 読んでいるところを確認するように指で抑えながら読む

・ 文字間や行間を狭くするとさらに読みにくくなる

・ 初期には音読よりも黙読が苦手である

・ 一度、音読して内容理解ができると2回目以降の読みは比較的スムーズになる

・ 文末などは適当に自分で変えて読んでしまう

・ 本を読んでいるとすぐに疲れてしまう

[書字障害:初期症状]

・ 促音(「がっこう」の「っ」)

  撥音(「とんでもない」の「ん」)、

  二重母音(おかあ  さんの「かあ」)など特殊音節の誤りが多い

・ 「わ」と「は」、「お」と「を」のように

  耳で聞くと同じ音(「オン」)の表記に誤りが多い

・ 「め」と「ぬ」、「わ」と「ね」、「雷」と「雪」のように

  形態的に似ている文字の誤りが多い

・ 画数の多い漢字に誤りが多い

(小枝,2015)

 

学習障害の早期発見とその課題

学習障害の発見には、「話す、聞く、読む、書く、計算する、推論する」 のひとつまたは複数の領域で著しい困難があることを確認する必要があります。1歳半健診、3歳健診の段階で発見されることは難しく、就学後から各教科が始まると、児童によってはつまずきが顕著になることがあります。具体的な状況把握がされるとその児童の学習おける障害の発見に繋がることになります。 (宇野,2017)

 

・5歳健診

発達障害の気づきの場として、母子保健分野で実施されている5歳健診があります(小枝,2007)が、健診の項目には、学習障害を発見するのに十分な項目が含まれていないという点があります。そのため、早期発見、早期支援は重要なのですが、現状では健診での早期発見の難しさも課題とされています。(東保, 2017)

 

・就学前後の子どものサイン

就学前後や読み書きの発達に基づいた就学前段階の子どものサインを見つけることが重要とされています。しかし、発達段階によっては同じ5歳でも個人差がみられることから、文字に興味を示さない子どももいるため、決めつけてしまわないように気をつけなくてはなりません。

 

・外国語の学習のつまずき

近年は、外国語の学習のつまずきにおいて、著しい困難がみられる小学校の高学年や中学校などで、学習障害の発見につながることがあります。

 

・環境の悪さによって生じる問題

注意しなくてはならないのが、環境要因によって学習が遅れている児童も学習障害児と間違われやすいことです。障害による学習の困難さがみられているのか、環境の要因による影響なのか判断しにくい場合、その誤解を生む可能性があることを留意しておく必要があります。

宇野,2017)

 

二次的障害

学習障害には、自閉スペクトラム症や注意欠如多動性障害、発達性協調運動障害などの神経発達症が併存することが指摘されています。また、未診断のまま月日が経過してしまっていた事例では、不安症や抑うつ障害など併存がみられることが報告されています。

(吉川,2017)

 

合理的配慮と支援の工夫

学習面などでつまずきがみられる子どもは読み書きの獲得に関する様々な能力を自然に身につけていけるわけではないので、文字に興味がでるような環境を整えてあげることや、学ぶ機会や活動への参加の促しなどを工夫することが必要です。

学校などでは、その子に合った学習方法の支援や課題の調整や工夫などの合理的配慮が必要とされます。学習に対する苦手意識が強くなり、書く練習、読む練習を拒否してしまう状況に陥る前に、楽しくどんどん学びたくなるような環境を配慮していくことは大切です。

例え、文章が流暢に読めないという場合でも、文字を音声で聞く、読み上げることで内容を理解することが可能であれば、タブレットPCやスマートフォンの読み上げアプリなど、電子機器などをうまく活用するという方法もあります。 

(河野,2017)

 

これらの上述したように、早期発見が大切であることがいわれている反面、早期発見のしにくさがあります。就学後に例えば文字の獲得につまずきがみられる子どもがいた場合、「学年が上がればばなんとかなるだろう」と放っておくのではなく、周囲が気づき、支援が得られるように配慮することが求められます。書字が苦手な子どもが、算数を嫌になるのは簡単ですが、苦手なことが少しずつできるようになるためには周囲の支援が欠かせません。

 

引用・参考文献

河野俊寛(2017)LDへの教育機関での取り組み 児童青年精神医学とその近接領域 58(3), p.370-378.

小枝達也(2015)今後の研究と診療の展望 特集・第56回 日本小児神経学会学術集会シンポジウム2 発達性読み書き障害(dyslexia)診断と治療の進歩:医療からのアプローチ 脳と発達 p.49-53

柘植雅義(2016)LDの発見と支援 臨床心理学 16(2) p.169-173

東保淳子(2017)学習障害の早期発見・支援に関する研究 愛知県立大学教育福祉学部論集 第66号

高橋三郎・大野裕(監訳)(2014)『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』医学書院

文部科省特別支援教育について

http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/1328729.htm 

吉川徹(2017)LDへの合理的配慮と医療機関での取り組み 児童青年精神医学とその接近領域  58(3), p.359-369

発達障害療育研究所

スタジオそらに所属する言語学博士、言語聴覚士、臨床心理士など、様々な分野の専門家が集まる研究所です。発達障害を中心に、関連の情報を分かりやすく解説します。

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