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特集
染色体を47本持っているダウン症候群

ダウン症(ダウン症候群)があるお子さんへの支援方法とは?特徴や、現れやすい合併症についても解説。

2022.03.14
  • ダウン症(ダウン症候群)の特徴
  • ダウン症(ダウン症候群)のお子さんと家族に対する支援方法
  • まとめ

(ダウン症について原因、症状、顔つきなど簡潔に解説しているこちらもあわせてご参照ください。)

 

ダウン症(ダウン症候群)の特徴

 ダウン症(ダウン症候群)は、体細胞の21番染色体が通常は2本であるのに対して、3本存在する(トリソミー症)ことで発症する先天性疾患群です。「後天性」が生まれた後に生じることであるのに対し、「先天性」ということは生まれつき、ダウン症であることを指しています。

 

ダウン症には標準型、転座型、モザイク型があります。確率はダウン症の方のうち標準型が90%以上、転座型が5%程度、モザイク型は非常にまれであることが知られています。

 

先天性の疾患であるため、遺伝の影響があると認識されがちですが、標準型とモザイク型は遺伝の影響は否定されており、転座型のみ、どちらかの親が転座染色体を保因していることが明らかになっています。いずれの型に関しても、出生前にダウン症であることを知ることができるため、出生前診断が話題に上ることもあります。

 

 ダウン症のお子さんは顔の中心部があまり成長しないのに対して顔の外側は成長するため特徴のある顔立ちをしており、一般の方でも認識が容易です。そのため、幼児期から学童期においてはいじめやからかいの対象となる場合も少なくありません。

 

また、幼少期の筋力の発達の遅れや言葉の発達の遅れが認められる傾向があります。生まれたばかりの赤ちゃんは、筋肉に力が入らず、首のすわりや立ち上がりも遅れる傾向にあります。そのため、手を伸ばしておもちゃを自分で引き寄せて遊んだり、はいはいして保護者を後追いしたりするようなことも少なく、周囲の刺激に対する反応が乏しいように思われることもあります。

 

筋力の弱さから、言葉に不明瞭さがあるお子さんや、言葉でのコミュニケーションが苦手なお子さんも少なくありません。

 

後天的に難聴になるなど、聴力が弱い傾向もあるため、自分が話すことだけではなく、聞き取ることも難しい場合もあります。知的障害の診断を伴う場合も多いため、知的発達の水準に合わせた支援が求められます。

 

このような知的障害や言語発達だけではなく、ダウン症にはさまざまな合併症が生じる可能性が報告されています。たとえば先天性心疾患はダウン症の50%程度に合併することや、白血病の発症率の高さ、難聴や白内障等の感覚的な障害、糖尿病や肥満といった内分泌の障害が発生することも指摘されています。そのため、以前は平均寿命が短い傾向がありましたが、治療や手術の技術の向上も発展し、成人後のケアやサポート、自分らしく生きるためのウェルビーイングやQOL(生活の質)の確保なども課題とされています。

 

ダウン症(ダウン症候群)のお子さんと家族に対する支援方法

 ダウン症は先天性の疾患であるため、生後間もない乳児期からさまざまな療育の適用や合併症予防のための検診なども必要です。さらには出生前診断などによって、出産前から保護者を中心とした家族に対する心理的支援や心理教育なども必要となる場合もあるでしょう。

 

 乳幼児期には、食事やトイレ、衣服の着脱などの身辺自立が支援の中心になることが多くなります。手先があまり器用ではないことが多いため、習得には時間を要する場合もあるでしょう。慣れない場面では緊張しやすい傾向も指摘されているため、できないからといって焦らせず、ゆっくりと支援を行っていくことが求められます。

 

あわせて、言語の獲得を含むコミュニケーション能力の向上をねらいとした支援を展開しつつ、周囲とのかかわりに興味をもつような機会を増やしたり、余暇につながるような興味関心を広げていったりするような関わりを重視していきます。筋力の弱さも特徴となるため、運動療法や理学療法などを併用することも求められます。

 

 小学校入学前後からは、学習面の支援も必要になります。また、自分で考えて判断し、行動することが求められることも増えていきます。緊張や不安が高まると普段できていることでもできなくなったり、突然の指名等、予想外の場面では固まってしまったりすることもあります。視覚的なツールの提示等も併用しつつ、予告することで予測して行動することを促し、成功体験を蓄積していくことが重要になります。

 

環境の変化に対しても、慣れるまで時間がかかりつつも、できていることに着目させることで自信を持たせるような支援が必要です。また、いじめやからかい、あるいは運動面や学習面で思うようにできないことで自信を無くしてしまうような場面に対する対処スキルの獲得やストレスへの対処方法の獲得も重要な課題になります。理解度や年齢に応じて、その場を離れたり保護者や教師に適切に訴えたりする対応から、徐々に自分で「やめて」と伝えたり、もっと積極的に他者と良好な関係を築くためのソーシャルスキルトレーニング等が必要となるでしょう。

 

まとめ

 ダウン症のあるお子さんの特徴と対応について紹介しました。生まれてから間もなく始まる早期療育を長期的な視点に基づいて展開していくことが、支援の重要なポイントとなります。近年は、ダウン症の方がインターネット等を通して、ダンスや歌、モデル、スポーツなどさまざまなところで活躍している様子を発信することが多くなりました。ダウン症に関する正しい知識の普及が、ダウン症を含む多くの方々の支援につながっていくことが期待されます。

 

小関俊祐/発達障害療育研究所アドバイザー

桜美林大学心理・教育学系准教授。 日本認知・行動療法学会公認心理師対策委員及び倫理委員、一般社団法人公認心理師の会運営委員及び教育・特別支援部会長、日本ストレスマネジメント学会常任理事・事務局長を務める。 2019年より発達障害療育研究所・スタジオそら顧問として活動。

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