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特集
子どものスモールステップ

スモールステップとは?段階的に学ぶメリットと実践例を紹介

2020.12.14

スモールステップとは?

 スモールステップは、目標とする事柄を段階ごとに細かくわけ、少しずつ、習得できるようにする考え方のことを言います。

 

 よく、人生はマラソンに例えられることがあります。長い道のりのゴールは見えず、でも1歩1歩、あそこの電柱まで、あの角を曲がるまで、と、少しずつ歩を進めていく様子が、小学校入学、進級、中学校入学と、大小さまざまなイベントを乗り越えていく様子と似ているのかもしれません。このような視点は、勉強やスポーツ、あるいは療育とも共通しています。

 

たとえば、「漢字を全部覚える」は途方もない先の目標になりますが、1年生で習う漢字、2年生で習う漢字、さらには単元ごとで習う漢字を細かくわけ、少しずつ、習得していくことができるよう、段階が組まれています。このような考え方をスモールステップと呼びます。漢字の例でいえば、1文字1文字が1つのステップ(階段)になっているイメージでしょうか。

 

スモールステップはどんな時に使うの?

 目標達成が困難で、時間がかかる場合(たとえば生活スキルの習得や受験勉強、ダイエット、成人の禁酒や禁煙など)や、難しい内容を達成しようとする場合(たとえばおむつを外す、言葉を話す、文字が書けるなど)には、目標達成のためのモチベーションを維持することが困難なことが多くなります。

 

そのようなときに、スモールステップを活用することで、少しの進歩(たとえばトイレを教えるようになった、「あー」といえるようになったなど)に対する達成感をしっかりとお子さんと共有し、次のステップへ向かうモチベーションを高めていきます。このように、スモールステップとは習得課題や学習内容を小さな単位に分け、段階的に習得や学習を進めていく方法です。

 

スモールステップの効果とメリット

スモールステップの効果は、大きく3つ挙げられます。

1.子どもも支援者も達成しやすく、自己肯定感を得やすい!

2.どこでつまずいているのかがわかりやすい!

3.教えるポイントが明確で、教えやすい!

 

1.子どもも支援者も、達成感を得て自信が持てる!

 ステップを細かく区切るので、「お子さんがすでにできるところ」から取り組み始めることが可能です。

 

最初から、「このくらいはできてほしい!」という保護者や支援者が期待する水準からスタートしてしまうと、子どもにとっては難易度が高く、失敗経験を積み重ねてしまう可能性もあります。すると、子どもは「もうやりたくない!」と、課題そのものを嫌いになってしまったり、自信を無くして、他の課題に対するモチベーションも下がってしまったりする可能性があります。

 

同様に保護者や支援者も、「なんでできないの!」とストレスを感じてしまったり、「私のかかわり方が悪いのかも」と、自信を無くすことにもつながったりしかねません。スモールステップの考え方をもとに、「できるところから」スタートし、子どもも保護者や支援者も、自信をもって課題に取り組むことができるようになります。

 

また、細かく「できた!」を実感することで、ほめられる経験も増え、自信が持てたり、自己肯定感を高めことができます。さらに課題そのものを好きになったりするだけではなく、ほめてくれる保護者や支援者との関係も良くなりやすいでしょう。

 

2.どこでつまずいているのかがわかりやすい!

 スモールステップをうまく実践するためのコツに「課題分析」があります。課題分析とは、1つの課題(行動)を細かい課題(行動)に分ける(分析する)ことを指します。例えば、「ごはんを食べる」は1つの行動を指しますが、①片手でスプーンや箸を持つ、②もう一方の手で茶碗を持つ(押さえる)、③スプーンでごはんをすくう、④ごはんの乗ったスプーンを口元までもっていく、⑤スプーンを口に入れる、⑥ごはんを噛む、⑦ごはんを飲み込む、といったように細かい行動に分析することができます。この課題分析の結果が、「ごはんを食べる」という行動のスモールステップになります。

 

すると、「ごはんがうまく食べられない」という子どもの支援を行う際に、例えば①のスプーンを持つところでつまずいているのか、あるいは③のすくうところが苦手なのかがわかりやすくなり、そのつまずきポイントに対して重点的に練習したり、支援を提供したりすることが可能になります。

 

3.教えるポイントが明確で、教えやすい!

 課題分析によって、スモールステップに基づいて支援を行うことによって、子どもに教える内容が1つに焦点づけることができ、子どもの反応にも注目しながら教えることができるようになります。また、課題分析を行うことによって、必ずしも最初のステップから教え始める必要はなく、子どもが取り組みやすかったり、保護者や支援者が教えやすかったりするところからスタートするという支援計画も、スムーズに組み立てられるようになります。

 

具体的には、まだスプーンは上手に持てないけれども、噛んで飲み込むことはできるので、そこに焦点を当ててフィードバックしていこう、といった支援方針を立てることができるようになるでしょう。

 

療育や家庭でのスモールステップ実践例

 スモールステップを活用する場面は、無限にあるといってもよいでしょう。我々も、日常生活の中で、自然と課題分析を行い、スモールステップに基づいて行動していることも少なくありません。スマホのアプリで「To Doリスト」を作って生活する、というのも、スモールステップの考え方と類似しています。

 

 そのほかにも、例えば勉強習慣のないお子さんや、自己肯定感の低いお子さんの場合には、たとえば「1+1=?」の問題に対して「3」と答えたとしても、「きちんと鉛筆持てたね!」「この『3』上手に書けているよ」などと、できているところにフィードバックを行いながら、いわゆる正解不正解ではなく、取り組もうとしたこと自体を称賛し、モチベーションを高めるような支援が有効でしょう。

 

 また、家族内、あるいは家族と支援者(療育機関や学校等)間で、スモールステップのうち、どのステップをターゲットに取り組んでいるのかを適宜共有することが、効果的に実践するためのポイントとなるでしょう。

 

「お母さんはここまででほめてくれるのに、お父さんはほめてくれない」とか、「A先生厳しすぎ、B先生優しすぎ」といったように、子どもが支援者の特徴に注目してしまい、自分の課題に帰属できなかったり、目標が明確にならないことで、子どもが混乱したりすることにもつながりかねません。保護者や支援者等、かかわる方が複数の場合、目的や目標、手続きの共有を十分に図ることが大事になるでしょう。

 

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小関俊祐/発達障害療育研究所アドバイザー

桜美林大学心理・教育学系准教授。 日本認知・行動療法学会公認心理師対策委員及び倫理委員、一般社団法人公認心理師の会運営委員及び教育・特別支援部会長、日本ストレスマネジメント学会常任理事・事務局長を務める。 2019年より発達障害療育研究所・スタジオそら顧問として活動。

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