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特集

「できた!」を支える目標設定のポイントとは?

2022.10.22
  • これまでの目標設定、間違ってる!?
  • ポイントその1:具体的な行動で目標を立てよう!
  • ポイントその2:「もうすぐできそうなこと」を目標にしよう!
  • ポイントその3:日常生活に根差した目標を立てよう!
  • まとめ

これまでの目標設定、間違ってる!?

私たちは、子どもの頃からいくつもの目標を設定し、それを達成させてきました。宿題を提出日まで終わらせるための日々の目標、テストの目標点数、次の試合に向けたチームと個人の目標、受験に向けた目標、仕事上の目標などなど、挙げればきりがありません。このように、目標設定は、私たちの日常生活に深く関係しているものといえるでしょう。

 

この目標設定にはいくつかのポイントがあります。これから紹介するいくつかのポイントを見ていただくと、「私の目標設定の仕方、間違っていたかも!?」と思われる方もいるかもしれません。ぜひ、ポイントをご覧いただき、保護者の方にとっても、お子さんにとっても、上手な目標設定をすることで、「できた!」の経験をたくさん増やしていただければと思います。

 

ポイントその1:具体的な行動で目標を立てよう!

何よりも重要なことは、「具体的な行動」で目標設定をするということです。「なるべく運動する」、「友だちと仲良くする」、「テストで100点取る」、「試合でゴールを決める」、といった目標はよく目にするものだと思います。これらの4つの目標は、「具体的な行動」で目標が立てられていない、という点が共通しています。詳しく見ていきましょう。

 

「なるべく運動する」という目標は、客観的に評価ができず、目標が達成できたのかどうかの判断が、人によって分かれてしまうという特徴があります。「なるべく運動する」という目標に対して、1階分、階段を使っただけでも「目標達成!」とする方もいれば、30分ジョギングしても、もっとできた、といって「未達成」と評価してしまう方もいるかもしれません。ここでは、運動量を問題にしているのではなく、毎日、目標が達成できたかどうかを同じ基準で確認することが必要であることを意味しています。したがって、「なるべく運動する」という目標よりも、「毎日1階分は階段を使って上がる」や「1日30分以上ジョギングする」というような、基準を明確にすることで、客観的に評価可能な目標を立てることが良いでしょう。

 

「友だちと仲良くする」という目標は、仲良く遊んでいる様子を見ることができれば、客観的に評価できそうで、良い目標のようにも見えます。しかし、この目標の難しさは「自分1人の力では目標が達成できない」というところにあります。友だちが忙しくて遊べないかもしれないし、友だちの機嫌が悪いときには、自分がどんなに努力をしても、目標が達成できない可能性があります。したがって、「友だちと仲良くする」という目標よりも、「毎朝友だちにおはようと言う」、「友だちに、一緒に遊ぼうと誘う」というような、自分の努力次第で達成可能な目標が良いでしょう。

 

「テストで100点取る」、「試合でゴールを決める」といった目標は、客観的に評価できますし、自分の努力次第で達成可能なようにも見えます。このような目標を立てた経験のある方も多いのではないでしょうか。これらの目標に共通するのは、「結果」を目標にしており、日々、どのような行動を継続したらよいのかがわからない、というところがカギになります。結果を目標にしてしまうと、たとえばたいして勉強しなくても、たまたま100点が取れることもあれば、一生懸命勉強しても、100点が取れないこともあり、一気にやる気をなくしてしまうことにもつながる可能性があります。どのような努力を積み重ねればよいのかがわかるように、「1日1時間勉強する」、「毎日、リフティングの練習をする」というような、日々の行動を目標にすることがおすすめです。

 

ポイントその2:「もうすぐできそうなこと」を目標にしよう!

ついつい私たちは、高い目標を設定しがちで、また高い目標を立てることが良いことのように思えることがあるでしょう。実際にその高い目標を達成できるのであれば良いのですが、特にお子さんの場合、高すぎる目標を立てたことによって目標がクリアできず、落ち込んだり自信を無くしてしまったりすることがあるかもしれません。

 

このようなことを避けるために、まずは目標に関係しそうな行動を、「すでにできていること」、「ちょっと頑張ったらできそうなこと」、「できてほしいけど今すぐには難しいこと」に分けてみましょう。たとえば、朝の支度がテーマだとしたら、顔を洗うことと朝ごはんを自分で食べることは「すでにできていること」、着替えは時々手伝わなければいけないこともあるけれど「ちょっと頑張ったらできそうなこと」、時間通りに起きることは「できてほしいけど今すぐには難しいこと」、のように分けられるかもしれません。この場合は、本当は自分で時間通りに起きてほしいのですが、最初のチャレンジとしては着替えを自分でやることからスタートすることがおすすめです。

 

このように、「ちょっと頑張ったらできそうなこと」から取り組むことで、お子さんが早めに「できた!」という経験を積むことができ、自信につながるとともに、保護者の方からほめられることで、またチャレンジしよう、という気持ちを養うことができます。同時に、保護者の方も、「うまく達成させることがでた!」と、ご自身のかかわり方にも自信が持てるようになるでしょう。一方で、「できてほしいけど今すぐには難しいこと」からスタートした場合、達成できれば大きな喜びや自信につながりますが、実際にはハードルが高いわけですので、失敗経験につながりやすく、自信を無くしかねません。

 

このように、特に初期のチャレンジにおいては、「ちょっと頑張ったらできそうなこと」から始めることがおすすめです。お子さんの「ちょっと頑張ったらできそうなこと」をうまく見極めるために、お子さんの様子を観察したり、「すでにできていること」をヒントにしながら目標を考えたりするとよいでしょう。

 

ポイントその3:日常生活に根差した目標を立てよう!

目標の達成には、1度の大きな努力よりも、日々のコツコツと、ちょっとした努力の積み重ねが重要です。そのためには、日常生活をガラリと変えるような目標設定はおすすめしません。日々のなかの、ちょっとした変化や工夫の中で達成できる目標を立てることがおすすめです。

 

たとえば、「お箸の持ち方を練習したい」というときに、練習時間を確保するために、毎朝1時間早起きして練習したり、夜寝る前に繰り返しトレーニングしたりすることは、長続きしない可能性が大きいですし、お子さんのモチベーションも維持しにくいでしょう。それよりも、朝御飯、あるいは比較的時間が確保しやすい晩御飯を食べるときにあわせてお箸の持ち方を練習すれば、わざわざ時間を確保する必要はありません。

 

このように、目標を達成するための行動は、1日のうちで、どの時間、どのタイミングでチャレンジするとよいか、日常生活を振り返りつつ考えてみましょう。大きく時間を確保することは、忙しくなればなるほど目標を達成することが難しくなります。ちょっとの工夫でチャレンジでき、日常生活に根差した目標を立てましょう。

 

まとめ

ここまで、上手な目標設定のポイントとして3つ、ご紹介しました。
お子さんの「できた!」という経験を増やしていけるよう、ぜひこのコラムを参考に、目標設定をご家族で話し合いながら、見直してみましょう。

「目標を達成しなければ!」という雰囲気よりも、「目標達成できたらこんなにいいことあるよね!」というような楽しい気持ちで話し合えるといいですね。

 

 

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小関俊祐/発達障害療育研究所アドバイザー

桜美林大学心理・教育学系准教授。 日本認知・行動療法学会公認心理師対策委員及び倫理委員、一般社団法人公認心理師の会運営委員及び教育・特別支援部会長、日本ストレスマネジメント学会常任理事・事務局長を務める。 2019年より発達障害療育研究所・スタジオそら顧問として活動。

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