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「本当はできるはずなのに、うまくできない!」そんな時のかかわり方のポイント

2022.12.12
  • 普段はできることなのに、どうしてやってくれないの!?
  • ポイントその1:ちゃんと指示が聞こえているかな?
  • ポイントその2:指示していることが理解できているかな?
  • ポイントその3:まだ片付けしたくないのかな?
  • 「できない理由」ではなく「できた理由」を探してみよう!

普段はできることなのに、どうしてやってくれないの!?

お子さんのできることを増やしていくためには、上手な目標設定をすることが効果的です。「具体的な行動で目標を立てる」、「『もうすぐできそうなこと』を目標にする」、「日常生活に根差した目標を立てる」といったポイントを意識することによって、お子さんの「できた!」の経験が増えていくことが期待されます。

(コラム:「できた!」を支える目標設定のポイントとは?

 

とはいえ、実際には、いつでもどんなときでも、どんな場所でも同じ行動ができるとは限りません。そのような時には、「なんでやらないの!」「どうしてできないの!?」と叱ったり何度も声かけをしたりしても、あまり効果が得られないこともあります。さらには、子どもが委縮して、ますます上手にできなくなってしまうこともあるでしょう。このように、本来ならできるはずのことなのに、なかなかうまくできないときのかかわり方のポイントを整理してみましょう。

 

こんな場面を例に考えてみましょう。

夕方になって、もうすぐ晩御飯の時間です。「そろそろお片付けしようね~」と、お子さんに声をかけてみました。片付ける場所がわかりやすいようにシールを貼ったり、細かい物がばらばらにならないように袋に入れたり、といったサポートを続けてきたことと、上手にできたときには少し大げさにでもしっかりほめることで、片付けも習慣化してきています。しかし、なぜか今日は、いつもできているお片付けができずに、遊び続けています。もう一度、「そろそろ晩御飯だよー。お片付けの時間だよー!」と声をかけてみましたが、やっぱり片付けが始まる様子がありません…。

 

ポイントその1:ちゃんと指示が聞こえているかな?

遊びや読書、テレビなどに夢中になっていると、ついついそちらに注意が向いてしまい、周りの声が聞こえない、という経験は、大人でも少なくありません。集中して遊びに取り組むことができていること自体はお子さんの発達にとって良いことでもあります。もし、集中しすぎて指示が聞こえていないような様子がうかがわれた場合には、お子さんに近づいて、軽く肩に手を置いたり、お子さんの目の前にいったりして、お子さんの注意を自分に向けてから片付けるよう指示を出すことが良いでしょう。おもちゃやゲームを取り上げたり、「何度も言っているでしょ!」と叱ったりすることは、お子さんが興奮したり泣き出したりする可能性が高く、逆効果です。しっかりとお子さんの注意がご自分に向いていることが確認できたら、あらためて、落ち着いたトーンで指示を繰り返してみましょう。

 

ポイントその2:指示していることが理解できているかな?

お子さんの年齢や理解度によっては、保護者の方の指示の意味が十分に理解できていない可能性もあります。もしかしたら、お子さんのこれまでの経験から、「前に片付けをママやパパと練習したのはあのおもちゃだったけど、このおもちゃはどこに片付けたらいいか聞いてないぞ?」と、混乱してしまっている可能性もあります。あるいは、保護者の方からみたら片付いていない状態でも、お子さんにとっては片付けた!と思っていることもあるでしょう。あらためて、「片付いた」という状態をお子さんと確認してみるとよいでしょう。その際、あまり完璧を求めすぎず、「おおよそ片付いた」ことが確認できたらほめることが、片付けの習慣を養うことにつながるでしょう。

そのほか、片付いている状態を写真に撮っておいて、それを見本にしながら片付けを促してみることも有効です。「間違い探し」のようなイメージで取り組むと、片付けなどの苦手な課題も楽しんで取り組めるかもしれません。

 

ポイントその3:まだ片付けしたくないのかな?

「あー!今いいところなのにー!」「あとちょっとで終わるから待ってて!」という心の叫びをお子さんが発している可能性もあるでしょう。そのようなときには、「あとどれくらい?」とおおよその目安を聞いてみたり、「長い針が〇になったらお片付けできるかな?」と相談してみたりできるとよいでしょう。やはり、一方的に「やめなさい!」と伝えるだけで終わってしまうのは逆効果となる可能性が高いです。

このような状況は、年齢によっては「あと〇分だけやってもいい?」などと、相談したり交渉したりする方法を学習するチャンスともいえます。「もう少し遊んでいたいなって思ったら、なんて相談したらいいと思う?」などと、相談することを促してみたり、「あと5分待って、って言ったらいいんだよ」と教えてあげたりすることで、心の叫びを上手に言語化する手助けができるでしょう。しっかり相談することができたら、それを認め、OKを出してあげることで、相談する力が定着していくと期待できます。

 

「できない理由」ではなく「できた理由」を探してみよう!

そのほかにも、たとえば自己紹介や学校での発表の場面など、緊張して普段通りの力が発揮できない、ということもあるでしょう。そのようなときには、ゆっくり深呼吸をしてみたり、ぐーっと背伸びをしてみたりすることで、緊張が少しでも緩むこと(リラックスすること)を確認してみることも良いでしょう。

また、気分が悪かったりイライラしていたり、疲れていたりなど、できない理由は実は無数にあります。そんなときには、「できない原因探し」をするのではなく、できているときにしっかり目を向けて、「できた理由探し」をしてみることがおすすめです。いろんな「できにくい原因」があったときにも、できたときの状況に近づける工夫をすることで、「できた!」が増える可能性が高くなるでしょう。「できた理由探し」は、お子さんと一緒に考えてみることもおすすめです!

 

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小関俊祐/発達障害療育研究所アドバイザー

桜美林大学心理・教育学系准教授。 日本認知・行動療法学会公認心理師対策委員及び倫理委員、一般社団法人公認心理師の会運営委員及び教育・特別支援部会長、日本ストレスマネジメント学会常任理事・事務局長を務める。 2019年より発達障害療育研究所・スタジオそら顧問として活動。

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