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特集

子どもとかかわるテクニックー子どもの行動の理解からー

2024.10.14
  • どうして行動に焦点を当てるの?
  • 子どもの行動への考え方
  • 望ましい行動を増やすために
  • 子どもとかかわるテクニック
  • ①スモールステップ
  • ②プロンプト
  • ③指示の出し方

どうして行動に焦点を当てるの?

 みなさんは、お子さんとのかかわり方で悩むことはありますか?子育てを行う保護者のみなさまは、日々考えながら、お子さんと接していると思います。

 子どもとのかかわり方を考えたり、工夫したりする際に大切なことは、子どもの「行動」に焦点を当てることです。心理学の分野では、行動とは、「マネができること」とされています。たとえば、「喜ぶ」は、やったーと言う、ガッツポーズをするなど、さまざまな可能性が考えられ、マネをすることが難しいです。しかし、「やったー!と言いながら両手を上にあげる」は概ねマネをすることができ、これを行動と考えます。

子どもの行動に焦点を当てることで、子どものできること、難しいことなどを正確に理解し、変化をキャッチすることができます。また、お子さんが望ましくない行動をした際に、「自分の子どもが許せない」ではなく、「自分の子どもはかわいいけど、この行動は望ましくない」と考えることができるでしょう。このように、目で見ることが難しい心の内面ではなく、目に見える行動をみていくことで、かかわり方のヒントがわかってきます

子どもの行動への考え方

お子さんとのかかわりに悩んだ際に、行動に焦点をあてて考えてみると、「ずっとテレビをみてしまう」、「食事のときに椅子から立ち上がる」などと、望ましくない行動に目がいってしまうことも、あると思います。

しかし、望ましくない行動をなくそう、減らそうと思っても、必ずしも望ましい行動が増えるとは限りません。「〇〇してはダメ!」と言われても、「じゃあどうすればよいのか」がわからないままになっている子どももいるでしょう。そのため、「望ましい行動を増やしていく」という考え方が大切になります。

たとえば、いつまでもテレビや動画を見てしまうお子さんがいるとします。そのようなときに、「テレビをみない」ではなく、「テレビをみる以外の時間を増やす」と考える、ということです。たとえば、洗濯物を畳む、ペットに餌を与えるなどのお手伝いをしてもらう、お絵描きをする、本を読む、といった、望ましい行動をしている時間を増やすような声掛けを行うことが重要となります。

望ましい行動を増やすために

お子さんの望ましい行動を増やすためには、「ほめる」ことが大切となります。保護者にほめられることは、子どもにとって嬉しいことです。そのため、子どもは、ほめられた行動を繰り返したり、自分のことを見てくれていると思うことができます。また、たくさんほめることで、保護者も気持ちよく子どもとかかわることができるでしょう。先ほどの例で挙げた、“テレビをみる以外の時間を増やしたい”というときには、手伝ってくれたり本を読んだりしているときにほめる、という方法がおすすめです。

また、どうすればよいかを伝えることも、有効でしょう。静かにしているときの時間を増やしたい、というときには、「本を読む」「手遊びを一緒にする」などと、「これをして静かにしよう」と伝えることで、何をすればよいかが明確になり、静かにする時間を増やすことができる可能性があります。

子どもとかかわるテクニック

最後に、子どもと気持ちよくかかわるテクニックを、3つ紹介します。

■テクニック1:スモールステップ

スモールステップとは、目標を細かく分けて、少しずつ習得できるようにする方法です。この方法は、生活スキルの習得など、目標達成が困難で、時間がかかる場合や、文字を書くなど、難しい内容を達成しようとする場合に有効です。たとえば、「ごはんを食べる」という行動を大きな目標とした際、①片手でスプーンを持つ、②もう一方の手で茶碗を押さえる、③スプーンでごはんをすくう、④ごはんの乗ったスプーンを口元までもっていく、⑤スプーンを口に入れる、⑥ごはんを噛む、⑦ごはんを飲み込む、といったように細かい行動に分析することができます。この細かいステップが、ごはんを食べることのスモールステップとなります。このように、細かく行動を分けることで、どこにつまずいているのかが理解できます。また、細かい行動ごとにほめることで、子どもは、自己肯定感を得やすくなるでしょう。

■テクニック2:プロンプト

プロンプトとは、望ましい行動を引き出すために、子どものできないことを手助け・援助することです。子どもが失敗して落ち込んでしまう前に、大人が上手にプロンプトを出すことで、成功体験を積み重ね、自信につながっていきます。

たとえば、口頭で指示を出すなどは言語的プロンプト、片足立ちで片手を支えるなどは身体的なプロンプトとなります。見本を示したり、立つ場所を指さしたり、手洗いの手順を絵カードで示すことは、視覚的なプロンプトとなります。子どもの発達段階や、特性によって、どのようなプロンプトが必要になるのかは、個人差があります。子どもに合わせてプロンプトを出すことを意識し、最終的には自分でできるようになるために、子どもの様子を見ながらプロンプトを少しずつなくしていきましょう。

■テクニック3:指示の出し方

まずは、子どもの注意を引いてから、指示を出すようにしましょう。子どもの視線や注意が他のことに向いている場合に指示を出しても、気がつかない、聞き逃す、理解できないなどのことがあります。そのため、名前を呼んだり、肩を叩いたりして、注意を引きましょう。また、短くわかりやすい指示を出すこともおすすめです。「手を洗ってからうがいをして椅子に座ってね」などと、一度にたくさんの行動を指示してしまうと、混乱してしまったり、聞き逃してしまうことがあります。そのため、「手を洗ってね」「うがいをしてね」など、指示を出した行動が終わってから、ひとつずつ、指示を出すようにしましょう。

支援者や保護者の方々と、お子さんの様子を話したり、共有したりしながら、お子さんに合ったかかわり方を一緒にみつけることができる方法のひとつに、ペアレントトレーニングがあります。ペアレントトレーニングは、保護者のかかわり方やお子さんの行動の変化、保護者のストレスの低減など、さまざまな効果があるといわれています。お住まいの地域の教育センターや、医療機関、心理センターなどで受けることができる可能性があります。気になる方は、ぜひ調べてみてください。保護者も含めて、園や学校などとチームになって、お子さんを支援していきましょう。

お子さんへのかかわり方へのヒントは、見つかったでしょうか?お子さんと楽しくかかわるためには、行動に着目し、お子さんの喜ぶ方法でほめてあげましょう。また、お子さんのことを考えている自分のことも、忘れずにほめてあげましょうね。

発達障害療育研究所

スタジオそらに所属する言語学博士、言語聴覚士、臨床心理士など、様々な分野の専門家が集まる研究所です。発達障害を中心に、関連の情報を分かりやすく解説します。

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