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構造化とは?種類やメリット、発達支援での具体例について解説

構造化とは?種類やメリット、発達支援での具体例について解説

2026.03.09
  • 構造化とは?
  • 時間の構造化
  • 空間の構造化
  • 手順の構造化
  • 構造化を行うメリット
  • 構造化を行う上での注意点
  • まとめ

 きれいに整理された部屋や勉強机の上は、気持ちもすっきりしますし、なんとなくやる気も能力もアップするような気持ちがしますよね。なぜ、整理整頓をすると、そのような気持ちになるでしょうか。

人によって、実際の効果はさまざまかもしれませんが、必要な物がどこにあるかわかりやすいので効率的であったり、注意を引くおもちゃや漫画などが散らばっていないことで、勉強や課題に集中しやすかったりすることが考えられます。

 発達支援(療育)の現場では、このような整理整頓のことを「構造化」と呼び、積極的に取り入れられています。また、実際の構造化は、整理整頓だけに限定されず、さまざまな要素を含んでいる手法です。ここでは、日常生活にも活用可能な「構造化」についてご紹介したいと思います。

構造化とは?

 構造化は、主に自閉スペクトラム症(ASD)の子どもやその家族の支援を目的として開発され、広く世界中で実践されている生活全般における総合的・包括的なプログラムであるTEACCH(Treatment and Education of Autistic and related Communication-handicapped CHildren)で用いられている、特徴的な手続きです。

ただし、この構造化の考え方は、ASDの子どもたちだけではなく、一般の子どもたちや、我々大人にとっても有効です。構造化には、「時間の構造化」、「空間の構造化」、「手順の構造化」などがあります。これらの特徴を整理してみましょう。

時間の構造化

 時間の構造化とは、いつ、何をするか、1日のスケジュールや特定の場所で行う活動などを、文字やイラスト、写真などを用いて提示することで、見通しを立てやすくしたり、何度も確認することで安心感を促したりすることをねらいとしています。

 ASDに代表される発達障害のある子どもたちの多くは、先の見通しが立たないことで、「次に何が起こるのだろう?」という不安や「何か嫌なことが起こるのではないか」と考えてイライラの高まりにつながる傾向にあります。「ちょっと待ってね」と言われても、10秒程度なのか5分なのか、あるいは数時間かかるのかわからないために、どのように振舞ったらいいかわからずに混乱してしまうこともあります。それに対して、全体のスケジュールを提示したり、時刻や「長い針が6になったら一緒に遊ぼう」と具体的に見通しを示したりすることによって、そのような不安やイライラを予防することが可能になったり、活動の予測が立つことで安心につながったりする場合があります。

 言葉で聞いた指示は、時間が経つと忘れてしまう可能性があるのに対して、(図1 時間の構造化の例)のように、文字やイラスト、写真などを用いて時間を構造化することで、何度も確認が可能となり、忘れたときに逐一保護者や先生に確認したりしなくても、自分で解決することが可能になります。

構造化とは?|時間の構造化の例

 これによって、子どもは自分で自分のスケジュールを把握することができたという自信につながります。加えて、保護者や先生にとっては、何度も同じ説明を繰り返す必要がなくなるために、負担の軽減につながることが期待できます。

予定の変更の可能性や、特別なイベントの予定なども、あわせて提示することによって、急な事態に対して混乱することを避けられるかもしれません。また、たとえばお父さんと日曜日にサッカーの約束をしたときに、それをスケジュールとして構造化することができていれば、お母さんと子どもがそのスケジュールを一緒に確認することで、お父さんが不在のときにも事実確認がスムーズになり、「言った、言わない」のトラブルを避け、また保護者もスケジュール調整のサポートをすることが可能になります。

 さらに、私たちもスケジュール帳に仕事の予定を記入して管理したり、大変な仕事が続いているときにはその後の楽しみな用事を励みに頑張ったりすることもあるのと同様に、大人になってからも活用できるスキルを子どものときから習慣づけることができるというメリットもあります。

空間の構造化

 空間の構造化は、決められた場所で安心して過ごすことができるように、どの空間(部屋や場所)が何をする場所なのかを明確にすることが目的です。

一般に、「空気を読む」と言われますが、ASDの子どもたちのなかには、空気を読むこと、すなわち状況の理解や場面を理解することが苦手な子どもが多いといわれています。そのため、「場所や場面にそぐわない行動をしてしまう」といったことが起こりえます。それに対して、(図2 空間の構造化の例)のように、場所と行動を一致させることによって、どの空間が何をする場所なのかを明確にすることを目指す手続きが「空間の構造化」です。

構造化とは?|空間の構造化の例

 空間の構造化の方法は、大きく、場所と選択すべき行動をマッチングすること(勉強部屋、遊ぶ部屋、寝る部屋、など)と、場所を明確に仕切りで区別すること(部屋のドア、カーペットの色、室内用のテント、ダンボールの囲い、など)です。また、これらによって構造化する場所は、①勉強や課題などを頑張る場所、②遊ぶ場所、③リラックスするための落ち着く場所、④①~③の中継場所として、スケジュールを確認したり、活動の切り替えをしたりする場所、に大別されます。

 特に、不安やイライラが喚起されやすい子どもの場合には、③の落ち着くための場所を明確に設定することで、不安やイライラが増幅することを防いだり、不安やイライラを自分でコントロールしたりすることができるようになることが期待できます。この落ち着く場所を設定するためのコツとして、ちょっとだけ嫌なことに直面した際に、落ち着く場所として設定したい場所に連れていき、子どもと一緒に深呼吸をしたり、手をギューッと握ってぱっと放して力を抜いたりしてリラックス状態を作り出し、「ここに来ると落ち着くね」という確認をしながら、「また今度嫌なことがあったらここに来てごらん」と、何度か促してあげると良いでしょう。1回ではなかなか定着しませんし、イライラが強い状況ではうまくいきにくいので、少しずつ取り組んでいくことをお勧めします。同様の方法は、夜寝つきが悪いお子さんなどにも応用することが可能です。

 学校などに比べて、部屋の数が少ない家庭においては、必ずしも部屋単位で区切る必要はなく、部屋の一部を場所として区切ることも良いでしょう。部屋の一部を、「●●ちゃんの基地」などとして、少々散らかっていても目をつぶりながら、安心の場所、切り替えの場所を作っていただくと良いでしょう。そのほかの、癇癪(かんしゃく)に対する対応については、こちらをご参照ください(https://studiosora.jp/column/1264/)。

手続きの構造化

 手順の構造化とは、個々の手順を細かく区切り、何をするのかを明確にすることをねらいとしています。耳から得た情報は、記憶に残りにくく、順番を覚えたり、優先順位を決めたりすることは難しいため、手順の構造化が有効となります。

時間の構造化が、比較的長いスパンでの構造化をねらいとするのに対して、手順の構造化では、ある特定の場面や状況に限定した、短いスパンでの構造化をねらいとしています。

 「手を洗ったらおやつ」とか、「勉強したら絵本」のように、頑張ったあとにはいいことがあるんだ!という楽しみな手続きも含めることで、ちょっと苦手な活動に対するモチベーションを高める効果が得られることもあります。

また、日常生活のルーティンとなっているような、起床時や就寝時、帰宅時などの手続きを構造化することで、「毎日同じことを何度も言う」ことを避け、子どもが自分で考えて、気づいて行動することを促すことにもつながります。ここでも、文字や絵、写真などで提示すると良いでしょう。具体的には、(図3 手順の構造化の例)のようなイラストや表を用いて、手順の構造化を示すことができます。

構造化とは?|手順の構造化の例

 手順の構造化を行うことで、「つまずきやすい手続き」に気づくことができたり、ほめる回数を増やしたりすることができることもあります。たとえば、「朝の準備が遅い」という課題を持っている子どもに対して、①7時に起きる、②顔を洗う、③歯を磨く、④ごはんを食べる、⑤7時45分に学校へ行く、などの手順を示しながら観察することで、③の歯磨きの場面で時間がかかっている、など、重点的に声掛けをするポイントがわかりやすくなります。また、「朝の準備が終わって学校に行くときにほめる」だと、1回しかほめるチャンスはありませんが、①起きたらほめる、②顔を洗ったらほめる、と、それぞれの手順ごとに、ほめる声掛けをするチャンスが増えて、子どもの自信にもつながるでしょう。

構造化を行うメリット

 構造化を行うことは、たくさんのメリットがあることが知られています。これまでご紹介してきたとおり、時間や手順の見通しが立つことによって、子どもの不安やイライラが減ることが期待できるでしょう。1日の流れや授業の進め方、活動の順番などが視覚的に分かりやすく提示されていて、時間が明確になっていることで、次に何をすればよいかが予測しやすくなり、不安や混乱を予防することが可能になります。また、園や学校からの帰宅後の流れや1時間あたりの授業の流れが構造化されることによって、話題の脱線が減ったり、集中力を高めたりすることにつながり、限られた時間を有効に使うことにもつながります。教育場面でも、活動の枠組みが決まることで、子どもが「今はこれをする時間」と理解しやすくなり、注意が散りにくくなるかもしれません。

 また、さまざまな構造化を適切に運用することによって、手順やルールが統一されやすくなるでしょう。それによって、子どもが何をしたらよいのか、自分で気づくことができるようになったり、「どうしていいか分からない」といったストレスが減ったりすることが期待できます。このような対応は、保護者や先生にもあてはまり、構造化された方法が共有されることによって、「こういう場面ではこのような声掛けをする」というような「共通フォーマット」を持ちやすくなるでしょう。そして子どもは、対応する人が変わっても同じような指示が出されるため、同じように行動することができるようになり、一定の成果が得られることで、子どもも支援者も自信を持つことが期待できます。

 

構造化を行う上での注意点

 構造化の一番の目的は、子どもの「できた!」を引き出し、安心感を高め、ストレスを減らすことです。したがって、子どもに自由度を与えずに、枠に縛り付けるような対応は適切ではありません。また、構造化に着目しすぎるあまり、子どもだけではなく、保護者や先生も、あらゆる物事を構造化しようとし、がんじがらめになってしまうことも避けなければなりません。保護者や先生が、一方的に構造化を進めるのではなく、子どもと相談しながら構造化の具体的な内容について調整ができると良いでしょう。

 また、構造化は保護者や先生など、大人が主導になることが多くなります。子どもの様子や理解度を見極めつつ、子ども自身が問題を解決したり、さまざまな状況を構造化することで乗り越えたりする経験も補償することが必要です。構造化を含めた環境面へのアプローチと、子ども本人の力を引き出すことをねらいとした、子どもへの直接的なアプローチを上手く使い分けることが重要です。

まとめ

 今回は構造化について、主に3つの構造化の方法について紹介しました。いずれも、私たちの日常生活に密接していることをテーマにしています。構造化することによって、子どもや、子どもを支える保護者にとっても、安心を増やし、日々のストレスが軽くなることが期待できるはずです。まずは、やりやすいところや手がだしやすいところから、チャレンジしてみて、うまく行った場合に、徐々に構造化の対象を拡げていくことをおすすめします。

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小関俊祐/発達障害療育研究所アドバイザー

桜美林大学心理・教育学系准教授。 日本認知・行動療法学会公認心理師対策委員及び倫理委員、一般社団法人公認心理師の会運営委員及び教育・特別支援部会長、日本ストレスマネジメント学会常任理事・事務局長を務める。 2019年より発達障害療育研究所・スタジオそら顧問として活動。

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