お問い合わせ 入会案内
特集
小学校の勉強についていけない学習障害児

学習障害/限局性学習症(LD/SLD)とは?特徴、支援方法を解説します。

2024.09.09
  • LD/SLDの特徴
  • LD/SLDの症状と困難さ
  • LD/SLDの早期発見とその課題
  • 合理的配慮と支援の工夫
  • まとめ

 これまで、「LD(学習障害)」という診断名が広く知られていましたが、近年は「SLD(限局性学習症)」と表現されるようになっています。これは、アメリカ精神医学会が出しているDSMという、診断マニュアルが改訂されたことに伴って、これまでのLDはSLD(Specific Learning Disorders)と表記されるようになったことによるものです。ただし、文部科学省をはじめ、教育現場や一般的には、「LD」という表記も継続して用いられており、「LD」という表記が誤りというわけではありません。

LD/SLDの特徴

 LD/SLDは発達障害の一種であり、理解度に関する全般的な遅れや、身体的な機能に大きな障害はないものの、「読む」「書く」「計算する」「聞き取る」などの特定分野のうちのいくつかに関する学習が極端に苦手となるのが特徴です。文部科学省は、LD(SLD) を以下のように定義しています。 

「学習障害とは、基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない。」

 なお、全般的な能力に苦手さを示すものは「知的障害」に当てはまる可能性があります。

LD/SLDは生まれつきの脳機能の異常と考えられています。ただし、詳しい原因についてはさまざまな可能性が指摘されており、現段階では明確なことはわかっていません。多くの場合、幼児期のうちから文字に興味を示さない、数を数えられないなどといった様子が確認されることがありますが、特に特徴が目立つようになるのは小学校入学以降となるでしょう。本人は理解しようと努力しているのにもかかわらず、文字が書けなかったり、読めなかったり、計算できなかったりすることで、教育相談を経由して、受診されることが多いようです。

LD/SLDの症状と困難さ

 LD/SLDの症状として、以下のような困難さを抱えていることが知られています(柘植, 2016)。ただし、以下の症状を1人の方がすべてもち合わせているというものではなく、1人の方につき、1つか2つ程度の症状をもっている場合が多いです。なお、読み書きに困難さがあるものを特にディスレクシア(Dyslexia)と呼びます(ディスレクシア(Dyslexia):ディスレクシアについてのコラムはこちら)。

①「聞く」ことへの困難さ
・全体の指示や説明を聞くことが難しい
・正確な音として聞き取ることが難しい
・聞いた内容を記憶にとどめておくことが難しい
・意味を理解することが難しい

②「話す」ことへの困難さ
・頭に浮かんだことを端的に話すことが難しい
・話しているうちに内容がそれてしまう

 ③「読む」ことへの困難さ 
・読み飛ばしや読み替えによる間違いが多い
・文字は読めても単語や文として読むことが難しい
・内容を理解することが難しい

 ④「書く」ことへの困難さ
・単語を正確に書くことが難しい
・板書を書き写すのに時間がかかる
・主語・述語などの文法構造の理解が難しい
・助詞の誤用が多い
・文章(作文)を書くことが難しい

⑤「計算する」ことへの困難さ
・数字を読んだり、書いたりすることに困難がみられる
・筆算が難しい

⑥「推論する」ことへの難しさ
・文章題を解くことに困難がある
・表やグラフを含む問題を解くことに困難がある
・図形を理解したり、図形を描いたりすることが困難である 

LD/SLDの早期発見とその課題

 LD/SLDの発見には、「話す、聞く、読む、書く、計算する、推論する」 のうち、1つまたは複数の領域で著しい困難があることを確認する必要があります。乳幼児健康診査(1歳半健診や3歳児健診など)の段階で発見することは難しく、小学校入学後に国語や算数などの授業が始まってから、つまずきが明らかになることがあります。その際に、どのような課題ができて、どのような課題ができないか、すなわち、読むことはできるけれど書くことが苦手、読み書きはできるけれど計算ができない、というように、できないことだけではなく、何ができるか、というところにも注目して情報収集することが大切です。

 また、近年では、外国語の学習において、著しい困難がみられる小学校の高学年や中学校などで、LD/SLDの発見につながることがあります。加えて注意しなくてはならないのが、環境要因によって学習が遅れている児童もLD/SLDと間違われやすいことです。障害による学習の困難さがみられているのか、環境の要因による影響なのか判断しにくい場合、その誤解を生む可能性があることを留意しておく必要があります。

合理的配慮と支援の工夫

 学習面などでつまずきがみられる子どもは、読み書きの獲得に関するさまざまな能力を自然に身につけていけるわけではありません。そのため、文字に興味をもつための環境を整えることや、学ぶ機会や活動への参加の促し方などを工夫することが必要です。学校などでは、子ども1人ひとりに合った学習支援の方法や、課題の調整などの合理的配慮が必要とされます。学習に対する苦手意識が強くなり、書く練習、読む練習を拒否してしまう状況に陥る前に、楽しくどんどん学びたくなるような環境に配慮していくことは大切です。文章が流暢に読めないという場合でも、文字を音声で聞く、読み上げるなどの支援によって、その内容を理解することが可能であれば、タブレットPCやスマートフォンの読み上げアプリなど、電子機器をうまく活用するという方法も選択肢として検討することが必要となるでしょう。 

まとめ

 ここでは、LD/SLDの特徴について紹介しました。LD/SLDは、早期発見が大切である一方で、早期発見がしにくいという側面もあります。就学後に、たとえば文字の獲得につまずきがみられる子どもがいた場合、「学年が上がればなんとかなるだろう」と見守るだけにしておくのではなく、周囲が気づき、支援につなげていくことが必要です。そのためには、できるまで何度も繰り返す、といったドリル学習などの方法にこだわらず、子どもにあったやり方を探索的に検討していくという視点が重要になるでしょう。

<引用・参考文献>
柘植雅義(2016)LDの発見と支援 臨床心理学,16,169-173.

小関俊祐/発達障害療育研究所アドバイザー

桜美林大学心理・教育学系准教授。 日本認知・行動療法学会公認心理師対策委員及び倫理委員、一般社団法人公認心理師の会運営委員及び教育・特別支援部会長、日本ストレスマネジメント学会常任理事・事務局長を務める。 2019年より発達障害療育研究所・スタジオそら顧問として活動。

著者について見る >