知能検査の種類と内容とは?WISC(ウェクスラー式知能検査)を中心にまとめます。
2025.07.14- 知能検査の種類
- WISC-IV
- WISC-V
- 知能検査で大事なこと
知能検査とは、文字どおり、知能を測定するための検査です。知能と一言にいっても、その中身はさまざまです。IQ(知能指数)は、一般的にも馴染みの深いものでしょうか。ただし、知能検査の本来の目的は、IQを出すことではありません。前回のそら通信「発達検査」(https://studiosora.jp/column/862/)でも触れていますが、お子さまの客観的なデータを得ることで、「よりよい支援に活かすために活用する」というのが、本来の目的です。
人は誰でも、得意なこと、苦手なことがあり、一般には「個性」と呼ばれることもあります。文系理系、運動が得意、美術が苦手、料理が得意、物を作るのが苦手…など、さまざまな得意不得意が考えられます。今回は、このような得意不得意を、客観的に理解するために実施される知能検査について、ご紹介します。
知能検査の種類
知能検査は、その目的や測定する知能の性質、対象となる子どもの年齢などによって、いくつかの種類があります。ここでは子どもを対象としたものを中心にご紹介します。
・WISC-IV、WISC-V (5歳~16歳11ヶ月)
・WAIS-Ⅳ (16歳~90歳11ヶ月)
・田中ビネーV、田中ビネーⅥ (2歳~成人)
・K-ABC-Ⅱ (2歳6ヶ月〜18歳11ヶ月)
などがあります。ローマ数字は、改訂された版数を指します。年代によって、一般的に求められる知識が変化したり、研究が進むことによって、知能を構成する要素が変わったりするために、10数年ごとに、改訂が行われることがあります。
WISC-IV
ここでは知能検査でよく活用されている「WISC-IV」についてお伝えします。WISC-Ⅳでは、全般的なIQ(全検査IQ)と、4つの下位検査の指標得点が算出されます。
<4つの下位検査>
・言語理解指標(Verbal Comprehension Index: VCI)
言葉を中心とした検査で、物の名前や言葉の理解、物事の背景などについて、言葉で理解し、言葉で伝えることができるかどうかを測定します。
・知覚推理指標(Perceptual Reasoning Index: PRI)
目で見て捉える力を測定します。実際に手を動かして回答する検査などもあります。空間認知や、推論など、目から入った情報を適切に把握し、処理できるかを確認します。
・ワーキングメモリー指標(Working Memory Index: WMI)
複数の情報を、耳で聞いて、記憶しながら頭のなかで処理をします。複数のことを記憶する力や、頭のなかで操作する力などを必要とします。
・処理速度指標(Processing Speed Index: PSI)
筆記の作業を用いて、決められた処理を、いかに早く、正確にできるかを測定します。
各指標得点同士を比較することで、お子さまの得意・不得意を客観的に理解することができます。得意なことを知ることで、得意なことで不得意なことをサポートするような支援方法を考えることもできるでしょう。
<実施形態>
検査実施時は、検査者と被検査者、1対1で実施します。個人差はありますが、約60分程度で実施されます。
WISC-V
2021年にWISCの最新版として、WISC-Ⅴが発行されました。現状では、検査を実施する施設によって、WISC-Ⅳを使用している場合もあれば、WISC-Ⅴを使用している場合もあります。
WISC-Ⅴでは、「言語理解指標」「視空間指標」「流動性推理指標」「ワーキングメモリ指標」「処理速度指標」の5つの指標を算出することとなり、
主な変更点として、
・「知覚推理指標」がなくなり、「視空間指標」と「流動性推理指標」に分けて置き換えられたこと
・測定するための検査項目(具体的な実施内容)に一部変更があること
などが挙げられます。
知能検査で大事なこと
発達検査とも共通しますが、一番大事なことは、IQの数値を知ることでも、何ができないかを知ることでもありません。お子さまが「何が得意か」を知ること、そしてそれを伸ばすためにどんな支援が有効かを考える材料にすることがとても大切です。検査をして結果を封筒に入れたまましまっておく、というのはもったいないことです。検査の結果から、将来お子さまがどんな生活をして、どんなところに喜びを感じるのか、ぜひ想像してみてください。知能検査の結果には、お子さまの幸せのためのヒントがたくさん詰まっているはずです。
<参考文献>
上野一彦・松田修・小林玄・木下智子 (2015) 『日本版WISC-IVによる発達障害のアセスメント』日本文化科学社
佐々木和義(監修)小関俊祐・石原廣保・池田浩之(編著) (2016)『認知行動療法を生かした発達障害児・者への支援~就学前から就学時,就労まで~』 ジアース教育新社
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