お問い合わせ 入会案内
特集
入園入学対策

入園・入学泣いたりしないかな。不安な子どもに試したい入園・入学対策

2020.02.10

 新学期が始まる時期や入園、入学の時期は、新たなスタートに対する期待も大きく膨らむ一方で、新しい環境に子どもが慣れることができるだろうか、先生には子どもの特徴を理解して関わっていただけるのだろうか、行事などが入ることによる、スケジュール変更についていけるのだろうか、などの不安も膨らんでしまうかもしれません。

 

 事前の準備をしてあげたいと思いつつも、どこまで手を差し伸べたらいいのか、きりがないようにも思えます。今回は、すぐに始められる、入園・入学準備について整理してみたいと思います。

 

大人になっても不安になりやすい

 環境の変化は、大人にとっても子どもにとっても、不安が高まる要因になる可能性があります。大人の場合はこれまでの経験をもとに、「前にやったようにやれば大丈夫」と対処方法を検討することもできますが、子どもの場合は十分な経験をしていなかったり、対処方法が備わっていなかったりするため、大人よりも不安が高まる可能性があります。また、子どもの時から不安が高い傾向にある人は、成人後も、一般の方よりも不安が高い傾向にあるという報告もあります。子どものうちから、不安への対処方法を身につけておけると良いでしょう。

 

子どもの不安を軽減させる5つの方法

 不安というものは、説得されてもなかなか無くなるものではありません。子どもの不安を下げるためには、どのような方法があるのでしょうか。

 

①実際に体験してみる

 実際に体験してみたら、思ったより不安が出てこなかった、という経験は、誰しもが1度はあるかもしれません。入学式を実際に練習させることはできませんが、学校までの道のりを一緒に歩いてみたり、トイレなどで困ったときに駆け込めるようなコンビニを一緒に確認してみたりすることも良いでしょう。

 

 特に不安の高いお子さまの場合には、学校にあらかじめ相談することで教室の様子や昇降口の様子などを見せてもらえる可能性もありますので、一度学校に連絡してみることも良いでしょう。

 

 また、体験中に一気に不安が高まる場合もあるかもしれません。そこで、「嫌な経験をさせたくない」と、体験を中止してしまうと、かえって逆効果です。もしお子さまの足が止まってしまったら、「戻る」のではなく、その場で立ち止まって、おしゃべりをしてみたり、周りの景色を眺めたりしながら、そのまま時間を過ごしていただくと、不安は徐々に下がっていくはずです。

 

②見通しを立ててみる

 入学式などは、実際には校長先生や来賓の先生の挨拶なども多く、お子さまにとっては「つまらない」と感じる可能性も少なくありません。おおよその式次第がわかればそれに沿って、どのような流れで式が進むのかを事前に子どもと確認してみると良いでしょう。学校のホームページなどには、校長先生の写真が載っている場合もあります。実際の写真を見せたり、絵で示したりしながら、流れを確認してみることも有効です。文字や絵でスケジュールを記載した、小さなメモを作って、ポケットに入れておくような対応も良いでしょう。

 

③誰にヘルプを求めればよいか確認する

 入学式の当日などは、まだ担任の先生もわかっていなかったり、クラスもわかっていなかったりするために、困ったときに誰に助けを求めてよいのか、保護者もわからない場合があります。仮に担任の先生の名前がわかっても、すぐにその先生を見つけられるとは限りません。「困ったときは、誰でもいいから先生に相談していいよ」などと、大きな方針だけの提示でもよいでしょう。余裕があれば、「トイレに行きたくなったらどうするか」、「迷子になったらどうするか」などのいくつかのパターンごとに、具体的な対処方法について確認することも有効です。しっかりと教え込むというよりは、クイズを出すような形で、楽しみながら確認したり教えたりできると良いでしょう。

 

④一喜一憂しすぎない

 当然ながら、入学式「だけ」うまくいけばOKというわけではありません。また、入学式がうまくいかなかったことと、学校生活がうまくいくかどうかは、別問題です。入学式がうまくいったのであれば、「しっかりと先生の方を見て話をきくことができていた」、「おおきな返事ができていた」などの、良かったことを具体的に伝えましょう。

 

 うまくいかなかった場合は、子ども自身も落ち込んでいる可能性があります。明日からの学校生活に向けて必要なこと、たとえば、先生の話を聞いていて落ち着かなくなってしまったときの対処法(たとえば、手を挙げて先生を呼ぶ)などを、具体的に確認しておくと良いでしょう。

 

⑤「うまくいった」ことだけではなく「チャレンジした」こともしっかりほめる!

 学校生活は、すべての子どもたちに共通して、「成功体験」だけを蓄積できる場面ばかりではありません。「うまくいった」をなかなか経験できない子どもたちも少なくないでしょう。うまくいかないことに目を向けて子どもに関わると、子どもは自信を無くし、ますます不安が高まってしまう可能性が出てきます。まずは保護者自身も落ち着いて関わることが重要です。そして、チャレンジしようとしたことに目を向けて、「どこまでは良かったのか」ということを整理して、チャレンジする姿勢も含めて、ほめていきましょう。

 

 子どもは、ついつい「できたか、できなかったか」の2択で判断してしまいがちです。子どもが自分の「部分点」にも気づけるように、声をかけましょう。

 

まとめ

 不安は、頭の中にしまっておこうとすると、どんどん増幅してしまい、不安の解消どころか、不安が大きくなってしまうこともあります。不安な要素は、紙に列挙してみたり、周りの人に話をしてみたりすることで、結果的に整理することができたり、思っていたほど大きな問題ではないことに気づけたりする可能性もあります。

 

 漠然とした不安には対処がしにくいですが、不安を具体化することで、適切な対処と準備ができると良いでしょう。失敗も含めて、入園や入学式、学校生活を楽しむことができると、なお良いですね。

 

小関俊祐/発達障害療育研究所アドバイザー

桜美林大学心理・教育学系准教授。 日本認知・行動療法学会公認心理師対策委員及び倫理委員、一般社団法人公認心理師の会運営委員及び教育・特別支援部会長、日本ストレスマネジメント学会常任理事・事務局長を務める。 2019年より発達障害療育研究所・スタジオそら顧問として活動。

著者について見る >