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特集
感覚過敏とは

感覚過敏とは?症状や、対処法、発達障害との関連性について解説

2026.02.09
  • 感覚過敏とは?
  • 聴覚過敏の症状
  • 視覚過敏の症状
  • 触覚過敏の症状
  • 嗅覚過敏の症状
  • 味覚過敏の症状
  • 感覚過敏は治る?
  • 感覚過敏の理解とかかわりの基本
  • 家庭でできる対処法
  • 受診の目安と相談先
  • 配慮の重要性
  • 感覚過敏に配慮した社会の広がり

 感覚過敏とは、聴覚、視覚、触覚、嗅覚、味覚といった感覚が過敏であるために、日常生活にさまざまな困難が生じている状態を指します。これらの感覚は主観的なものであるため、他者と感覚自体を比較することは非常に困難であると考えられます。そのため、日常生活における支障度、すなわち困り具合を踏まえてその症状を理解していくことが重要です。ここでは、感覚過敏について、詳しくご紹介していきます。

感覚過敏とは?

 すべての人には、五感といわれる、視覚、触覚、聴覚、嗅覚、味覚が備わっています。それぞれ、五感に対応した体のいろいろな部分で、外からのさまざまな刺激を受け取り(受信)、その刺激の情報を脳に伝達し、脳がその情報を理解しています。この刺激情報の受信や伝達、理解の段階のどこかで、過剰に反応してしまうことで感覚過敏が起こったり、逆にしっかりと反応できないことで感覚鈍麻が起こったりしていると考えられています。

 実際には、この五感の受け止め方は人によってばらつきがあり、たとえば料理の達人などは味覚が敏感かもしれませんし、音楽の天才などは聴覚が敏感かもしれません。このように、感覚の過敏さや鈍麻さ(鈍感さ)は個人差があるものなのですが、これが日常生活に支障をきたしてしまうようなレベルになると、感覚過敏や感覚鈍麻といわれ、支援の対象にもなりえます。

 感覚過敏は症状であり、診断名ではありません。感覚過敏や感覚鈍麻は発達障害の、特に自閉スペクトラム症のある方々に見受けられることが多いですが、感覚過敏や感覚鈍麻があるからといって発達障害というわけではありませんし、感覚過敏や感覚鈍麻がないからといって、発達障害ではないと考えることもできません。また、定型発達の子どもたちのなかにも一過性の感覚過敏がみられることがありますが、成長とともに改善するケースが多いとされています。

感覚過敏の特徴

感覚過敏とは|五感別感覚過敏の特徴

【聴覚過敏の症状】
 大きな音、特に突然の音が苦手、時計やエアコンなどの小さな生活音も気になって集中できない、などが挙げられます。

【視覚過敏の症状】
 蛍光灯などの光が気になって目を開けていられない、少しの明かりでもまぶしくて夜眠れない、テレビやパソコンなどを見続けることができない、などが挙げられます。

【触覚過敏の症状】
 服の着心地が気になったり洋服のタグなどがヒリヒリしたりして痛い、軽く触れられただけでも痛がったり嫌がったりする、髪をとかしたり歯磨きをしたりすることを嫌がる、などが挙げられます。

【嗅覚過敏の症状】
 特定のにおい(石鹸、香水、乗り物、食品売り場など)が苦手、などが挙げられます。一般にはいいにおいとされるにおいでも、嗅覚過敏の方にとっては不快感を与える可能性がある点が特徴的です。

【味覚過敏の症状】
 特定の味を嫌がる、食感が受け入れられない、などが挙げられます。

感覚過敏は治る?

 感覚過敏は、脳の感覚入力処理の不具合によって生じている症状です。そのため、薬や手術で根本的に変えるのは難しく、完全に「治る」ものではないと考えられています。そのため、生涯続くものと位置付けられていますが、適切な対処法を用いることによって、その症状を大幅に軽減させることも可能であると考えられています。

感覚過敏の理解とかかわりの基本

 基本的な対応方針は、「無理強いしない」ということです。誰しも、「うるさすぎて我慢できない」とか、「臭すぎてもう耐えられない」とか、「痛くてどうしようもない」といった状況は、避けたいですし、一刻も早くその状況から逃れたいはずです。特に感覚過敏のある方々は、日常的に、我慢しようにもできないくらいの刺激にさらされている、と考えるとよいかもしれません。

 また、場所によってはマスクの着用を求められる場面もありますが、特に触覚の過敏さがある方にとっては、マスクを着けることに大変な苦痛を感じている方々もいらっしゃいます。息苦しさもそうですが、マスクの触れる耳や口の周りに、一般の人々が想像できないくらいの、我慢できないほどの痛みやかゆみなどの苦痛を感じている可能性があります。

 さらに、マスクを着けていないことで責められたり、避けられたりすることで自己肯定感が下がるなどのストレスを感じることもあるでしょう。このような視点に立てば、感覚過敏のある方や、同様にさまざまな事情をもってマスクを着けていない方々に対して「何か理由があるのだろう」と、相手の事情や背景を考え、想像して対応することがすべての人々に求められており、社会全体として、他者理解の観点を見直すことも重要になるといえるでしょう。

家庭でできる対処法

【聴覚過敏の対処法】
 聴覚に関しては、イヤーマフ(ヘッドホン)などを用いて対処することも有効です。ただし、重要な音を聞き逃してしまう、というデメリットもあるので、使う場面や状況を考慮することが重要です。

 苦手な音が出る場所(工事現場など)には近づかない、といった対応も有効ですが、ダンスの時間や音楽の授業など、できる限り避けずに挑戦できるとよい場面もあるでしょう。たとえば、演奏を聴いたり自分で演奏したりする際には、「シンバルが2回なるよ」とあらかじめ伝えておき、「この後だよ、耳ふさいで」などと声をかけてあげることで対応できることもあるでしょう。最初は小さい音量で慣れておいて、次第にみんなと同じ音量で聴けるようになる、ということも大事です。また、授業中などにどうしてもつらくなった場合には、保健室に行くなどの対応を、事前に確認しておくことも必要です。

【視覚過敏の対処法】
 最近は、ブルーライトカットの眼鏡や、あまり見た目に違和感のないサングラスなども市販されるようになり、適切な道具に手を出しやすくなってきました。蛍光灯なども、間接照明の工夫などが家具売り場でも紹介されるなど、活用できる工夫がたくさんありそうです。

 その一方で、学校でもパソコンやタブレットなどが導入された授業が展開されるようになり、授業に集中できなかったり、画面から目を逸らすことで、集中力がないと誤解されてしまったりすることもあるかもしれません。学校の先生に相談して理解を求めつつ、パソコンやタブレットの明るさを調節する方法などを習得することも有効でしょう。

【触覚過敏の対処法】
 触覚は全身で感じるものであり、また服を着ることで、常に刺激にさらされているので、適切な対処を講じることができないと、日常生活で大きなストレスにつながってしまいます。
 基本的には、「OKなもの」を探していき、特に身の周りは「OKなもの」で固められるとよいですね。特に、肌着や下着は、同じものや同じ素材、同じタイプのものをそろえることで、安心して生活することができるでしょう。学校の体操服などが着にくい場合には、先生と相談することも必要です。その時も、体操服全体の感覚がダメなのか、体操服のタグを切ってしまえばOKなのかなど、どの部分の感覚が特に問題なのかを、丁寧に聞き取ってあげると、先生との相談もスムーズになるでしょう。

 また、歯磨きなどは自分でできるようになると、過敏の程度もコントロールしやすくなるので、歯磨きの方法も早めに習得できるよう、トレーニングが必要です。くしや歯ブラシ選びも重要です。

【嗅覚過敏の対処法】
 一般的に「いいにおい」とされている石鹸や香水、洗剤のにおいなどが、嗅覚の過敏さがある方にとって「いいにおい」とは限りません。服を着たがらない子どもが、触覚の過敏さが原因かと思っていたら、使っていた洗剤が原因だった、ということもあり、うまく苦手さを言語化できない子どもの場合には、注意が必要です。可能な限り、においを一緒に確認したうえで選択することが良いでしょう。好きなにおいがあれば、それを持ち歩くことで、場所特有のにおいがあるところでも過ごすことができるようになるかもしれません。

【味覚過敏の対処法】
 納豆のネバネバなど、厳密には口の中の触覚に関する過敏といえるのですが、口の中で起こることとして、味覚にまとめて位置付けています。味覚の過敏さの影響で、好き嫌いが非常に極端で、あるチェーン店の同じメニューしか食べられなかったり、そのためメニュー改訂などが大きなストレスになってしまったりする場合もあります。

 対応としては、苦手なものを無理に食べさせることは避け、可能であれば、給食の代わりにお弁当にするようなことも検討するとよいでしょう。アレルギーのある子どもへの食事対応と、同じように考えていただくとイメージしやすいかもしれません。また、体調や機嫌がいいときに、新しい食べ物や、違う調理法を試してみて、食べられるもののレパートリーを増やすようなチャレンジもあわせて必要でしょう。

受診の目安と相談先

 感覚の過敏さは、個人の主観によるものが大きいため、その過敏さによって日常生活に支障をきたしているかどうかという点が重要です。感覚過敏のために、園や学校、仕事に行くことができなかったり、睡眠などが妨げられて十分に休息できなかったりする場合は、受診を検討することも必要でしょう。また、過敏さによって、特定の人とのかかわりを避けたり、逆に避けられたりすることで、対人関係に影響を及ぼすことも起こり得ます。このような場合にも、適切な機関にて相談を行うことができるとよいでしょう。

 また、過敏さの強度が強く、また日常生活で困る頻度が高い場合も注意が必要です。日常的な音や光、触感、においなどによって、パニックになってしまったり、気分が悪くなったりしてしまうことが1日のうちに何度も生じるような場合にも、受診を検討するとよいでしょう。これらの過敏さの影響で、イライラしたり集中力が低下したりすることも考えられます。

 相談先として、発達障害の診断や通院等でかかりつけの医療機関があるのであれば、同じ機関が良いでしょう。小児科等、普段から通っている病院に、まずは相談してみることも有効です。また、地域の保健センター、子育て支援課、発達障害者支援センターなどで相談機関について聞いてみることも有効です。

配慮の重要性

 感覚過敏のあるお子さんに対する配慮は、お子さんの安心と成長を支えるうえで非常に重要です。以下のポイントを軸に、具体的な配慮と日常の工夫を紹介します。

・お子さんの感覚を尊重する姿勢を第一に
 お子さんの「痛い」「いやだ」というような、刺激が強いという訴えを否定したり、「我慢しなさい」と叱ったりするのではなく、まずは「どこが痛い?」「我慢できそう?」と受け止める姿勢が必要です。刺激に対して無理に慣れさせようとすると、痛みを訴えてはいけない、と誤解したり、刺激が強すぎて体調を崩してしまったりすることにも繋がりかねません。まずは、訴えを受け止め、お子さんと一緒に解決を目指す姿勢を共有することが信頼関係の構築にも繋がります。また、急な刺激を避けられない場面でも、事前に伝える(「これから掃除機をかけるから、静かな場所にいてね」など)というような対応も、お子さんの安心感につながります。

・お子さん1人ひとりにあわせた対応
 同じ年齢、同じ診断がついているお子さんでも、感覚過敏の程度や苦手な刺激はそれぞれです。特定の刺激を完全に排除する、ということは非常に困難なので、お子さんの反応に合わせた柔軟な対応を心掛けます。また、苦手な刺激などの「ダメなもの探し」をするよりも、得意な場面や刺激などの「好きなもの探し」をしていくことで、さまざまな刺激と上手く付き合う、というスタンスを身につけることも可能になります。

・園や学校との協力体制の構築
 園や学校の先生方と連携し、感覚過敏の症状や深刻度に応じて、合理的配慮および個別の支援計画へ、感覚過敏への対応事項を組み込んでもらえるよう、相談してみましょう。たとえば、合理的配慮の観点からは、聴覚過敏がひどい時に一時休憩するための静かな教室の確保、視覚過敏のきっかけとなるタブレット以外の刺激の少ない教材の活用などが挙げられます。また、個別の支援計画に組み込むことによって、お子さん自身の自己理解や、苦手な刺激を回避するためのセルフコントロール力の向上支援につながることも期待できます。お子さん自身が「自分はどう感じるか」「何が嫌なのか」を言語化できるようになるための練習をしたり、安全な場所の確保や、困った時の対処法(静かな呼吸、短い休憩の取り方)を身につける練習ができると良いでしょう。これらの取り組みを、専門機関や発達支援の専門家とも連携して、家庭と園、学校で一貫した支援方針を作ることが理想的です。

感覚過敏に配慮した社会の広がり

・クワイエットアワー
 ショッピングモールやスーパー、遊園地などで、一定時間だけ照明やBGM、アナウンス音量を下げ、人の出入りも比較的少ない静かな時間帯を設ける取り組みです。大きな音や眩しさが苦手な人でも利用しやすくなり、「混んでいる時間は無理だから諦める」という状況を減らす効果があるとされています。日本においても、いくつかの企業がこのような取り組みを導入しています。

・センサリールーム
 現地でのスポーツ観戦は大音量での応援も醍醐味の1つですが、聴覚過敏のあるお子さんは、試合は見たいけど、うるさすぎて我慢できず、観戦をあきらめる、という事態も起こります。センサリールームは、音、光、におい、触感など五感への刺激を調整した特別な部屋で、刺激を減らしたり、心地よい刺激だけを選べるように工夫された空間です。感覚過敏のある人が、パニックや疲労を避けながらその場にとどまれる「安心基地」として、スポーツ観戦だけではなく、学校、医療施設、商業施設などで導入が進んでいます。
(FC東京設置・センサリールームの見学レポートはこちら

・スヌーズレンを利用したセラピールーム
 スヌーズレンは、柔らかい光や音楽、クッションなどを用いて、「好きな感覚をゆっくり味わってリラックスする」ことを目的としたリラクセーションの方法です。医療や福祉、教育などで、強い不安や緊張を和らげるセラピー的な空間として取り入れられ、感情の安定や自己調整力の向上が期待されています。

・感覚刺激を回避できるスペース
 店舗やイベント会場、学校などの一角に、騒音や人混み、強い光から離れて休める「カームダウンスペース」や「静かな部屋」を設ける取り組みです。その場から完全に離れなくても一時的な避難ができることで、「しんどくなったらここに行けばいい」という見通しが生まれ、外出や参加へのハードルが下がることも期待されています。
保育園などでも様々な感覚刺激から一時的に離れて休めるスペースを設置する取り組みが増え始めているところです。例として、マスセット株式会社「おちつきルーム(外部リンク:https://mass-set.co.jp/product/m60777/)」などが挙げられます。

・センサリーマップ
 街や施設の中で「音が大きい場所」「においが強い場所」「人が多く混みやすい時間帯」など、五感に関わる情報を地図上に可視化したものです。大阪・関西万博でも公式センサリーマップが作成され、公開されていました。これを用いることによって、事前にルートや利用時間を選べるため、苦手な刺激をなるべく避けながら移動や利用ができ、感覚過敏のある人が自分のペースで社会参加しやすくなることが期待されています。

まとめ

 感覚過敏は、程度は異なりますが、大人も含めた多くの人にその傾向が認められます。したがって、どのような刺激に対して過敏があり、どのような場面で困難を感じているのか、といったことを整理しながら、対応を検討する必要があります。心理的ストレスにも直結しうる事項であるため、早期の対応も求められるでしょう。また、言葉での意思表示が難しいお子さんの場合には、理由はよくわからないけれど泣いている、といった状況の背景に感覚過敏があることもあります。いろいろな刺激や物を試してみて、心地よい物を選択できると良いでしょう。

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小関俊祐/発達障害療育研究所アドバイザー

桜美林大学心理・教育学系准教授。 日本認知・行動療法学会公認心理師対策委員及び倫理委員、一般社団法人公認心理師の会運営委員及び教育・特別支援部会長、日本ストレスマネジメント学会常任理事・事務局長を務める。 2019年より発達障害療育研究所・スタジオそら顧問として活動。

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