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特集
「障害を価値に変える(バリアバリュー)」をテーマとしたユニバーサルデザインに関する研修講演

「ユニバーサルデザイン」を学ぶ。スタッフの心に響く株式会社ミライロ 垣内俊哉社長の特別講演レポート

2024.12.09

 2024年10月17日(木)、アース・キッズ株式会社では、全社員ミーティングを開催し、株式会社ミライロ代表取締役社長、垣内俊哉氏を講師に迎え、「障害を価値に変える(バリアバリュー)」をテーマとしたユニバーサルデザインに関する研修講演を実施しました。本講演は、当社のスタッフにとって、多様性や合理的配慮について深く理解する貴重な機会となり、社会における障害との向き合い方、スタジオにおける発達支援療育の在り方を再認識する大きな契機となりました。

本記事では、その講演の中で語られた内容について抜粋してご紹介します。

幼少期から障害と向き合うことで生まれた「バリアバリュー」という理念

 “生まれつき骨がもろく折れやすい病気を抱え、幼少期から車いす生活を余儀なくされました。「歩くこと」ができない現実に直面し、深い絶望を感じたものの、多くの人々の支えを受け「歩けなくてもできること」を探求しました。この経験から「バリアバリュー」という理念を創出し、株式会社ミライロを設立しました。この理念は、個々の弱点やコンプレックスを克服するのではなく、それらを強みや価値に転換し、社会を変革することを目指しています。

 大学生時代、アルバイト先を探すも多くの企業に断られ、唯一採用してくれたWeb制作会社で「車いすの営業マン」として認知され、トップの売上を達成しました。上司から「障害が営業の強みだ」と励まされ、「歩けないからこそできること」に気づきました。この経験を基に、大学在学中に友人と共に起業し、障害を新たな価値(バリュー)に変えることを目指しました。”

環境・意識・情報という3つのバリアとその解消策について

 “障害者にとって障壁となるバリアは環境、意識、情報の3つに分類されます。環境のバリアは物理的障壁であり、スロープやエレベーターの設置、バリア情報の事前開示が解消策となります。意識のバリアには「無関心」と「過剰」な対応があり、適切な対応として相手の声を聞き選択肢を提供することが重要です。車いすの人ユーザーが食事をするためにテーブルに着く場合、椅子を取り除くのではなく、椅子に座りたい方もいるので、その方がどうしたいのか、選択肢を確認することが大切なのです。情報のバリアでは、障害者手帳の電子化(ミライロID)や情報アクセスの改善が求められています。

 ミライロでは、意識のバリアを解消する具体的な取組みとして、ユニバーサルマナーを普及しています。2013年から「ユニバーサルマナー検定」を推進し、障害者や高齢者と向き合う際のマナーを啓発しています。アナウンサーや企業の従業員を含む延べ22万人以上の方々が習得しています。インクルーシブ教育の進展により、次世代の障害者理解が深まりつつあり、誰もが日常的に対応できる環境を整備していくことが重要です。”

ユニバーサルマナー検定の公式サイト:https://universal-manners.jp/

多様性がもたらす組織の強み

  “多様性は組織に新たな価値を生み出し、脆弱性を克服します。多様な人材の集結により、社会課題に対する企業の意義が高まり、経済性と社会性の両立が可能となります。継続的な改善と「何ができるか」を考える姿勢が事業の成長を支えます。”

アース・キッズ株式会社へのメッセージ

 “教育の現場は、日本の未来を変える非常に大切なものです。それぞれの場面での経験が人間形成に大きな影響を与えます。そんな素晴らしい仕事に取り組んでいる皆さんに感謝の意を表します。

 アース・キッズの職員が多様性を理解し、子どもたちに対してその価値観を伝えることで、未来の社会をより良いものにできます。障害のある子どももない子どもも、共に学び成長できる環境を整えることが重要です。職員一人ひとりが意識と行動を変えることで、職場全体が多様な人々とともに歩む「スタンダード」を築くことができます。

 2013年に受けた手術の際、5分間の心肺停止を経験したことから、時間の有限性を理解しました。時間は有限であり、他者への感謝を伝えること、自分がやりたいこと、今できることは先延ばしにせずにすぐに行動することが重要です。行動することで後悔を減らし、人生の「幅」を広げることができます。仕事や出会い、学びを通じて充実した人生を送ることが可能です。自分自身や周囲と向き合い、行動することで人生の長さではなく、「人生の幅」を拡げていくことができるのです。「バリア(障害)」と「バリュー(価値)」を前向きに捉え、一人ひとりの可能性を最大限に引き出すこと。誰一人取り残さない社会の実現を目指し、共に歩んでいきましょう。”

研修後に寄せられたスタッフの声

 研修講演後、多くのスタッフから様々な感想を聞くことができました。いくつかの声をご紹介いたします。

○選択肢の重要性「こちらが良かれと思っていることでも、当事者に聞かなければ本心は分からないことが印象に残りました。どの人に対しても選択肢を与えて本心を聞いてみることが大切なのだと感じました。」

○バリアバリュー「障害があるということを強みとして捉える、バリアバリューという考え方が素敵だと思いました。苦手なことに目を向けるのではなく、得意なことを伸ばすことが大事だと感じました。」

○人生の幅「『人生の長さではなく幅で考える』という考え方に触れ、社会人として以上に、一人間としてこれからの人生をどう楽しむか深く考えさせられました。」

○ 環境のバリア「障害があることが問題なのではなく、環境が障害になっているという発言に強く共感を覚えました。障害を持っていることがマイナスではなく、バリューであるというのを垣内さんから聞くことで、障害を持つ方々にとっても希望だと感じました。」

○ ユニバーサルマナー「『相手を思いやって行動することは、相手からしたら押し付けになることもある。何かをしてあげるのではなく選択肢を与えるべき』という話を聞いて考えさせられました。よかれと思ったことでも相手にとっては迷惑なこと、自分で出来るのにと思われることもあると気づくことができました。」

○発達支援療育への応用「垣内さんの『ユニバーサルマナー』の話を聞き、保護者対応やチームメンバーとの連携にも応用できると感じました。普段から相手の立場に立ち、どんな支援が必要かを考えたいと思います。」

アース・キッズ株式会社のこれから

 垣内さんの講演では、「教育の現場が日本の未来を支える大切な役割を果たしている」という言葉が伝えられました。職員が多様性を理解し、子どもたちにその価値観を伝えることで、次世代の社会がより良いものになると力説されました。障害のある子どもも、そうでない子どもも共に学び成長する環境を整えることが、未来の社会の土台を築く鍵であると社員たちは再認識しました。

 アース・キッズ株式会社では、これまで以上にユニバーサルデザインに対する理解を深め、発達支援療育に活かしていくとともに、多様性を尊重する意識を高めていけたらと考え、ユニバーサルマナー検定に取り組みます。全社員が多様な人々と接するスキルを高め、職場全体の対応力を向上させていくことが重要です。さらに、垣内さんも重視されていたインクルーシブの理念を子どもたちの成長過程の中に普及していくことにも取り組んでいきたいと考えています。

 垣内さんの講演は、スタッフに「障害は環境次第で価値へと転換できる」という希望を与え、行動へのきっかけを提供していただきました。アース・キッズ株式会社は、これからもスタッフが一丸となり、「バリアバリュー」の理念を大切にしながら、社会課題の解決や子どもたちの未来を支える企業として、持続可能な成長を目指して参ります。

株式会社ミライロについて

https://www.mirairo.co.jp/
○ユニバーサルデザイン及びユニバーサルマナーに関するリサーチ及びコンサルティング、研修教育研修の企画、開催及び運営、○建築物、室内空間及び製品のユニバーサルデザイン化に伴う企画、設計、開発及び施工 などを行う。

株式会社ミライロ 垣内俊哉 代表取締役社長について

https://www.mirairo.co.jp/company/profile

日本ユニバーサルマナー協会 代表理事、日本財団パラスポーツサポートセンター顧問、龍谷大学 客員教授、立命館大学 訪問教員、上智大学 非常勤講師

株式会社ミライロの創業者。1989年愛知県安城市生まれ、岐阜県中津川育ち。

日本経営者賞等の多数の賞を受賞。障害者や高齢者のサポート方法を学ぶ「ユニバーサルマナー検定」や、障害者手帳をデジタル化した「ミライロID」など、DEI(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)の実現に向けた様々な事業を展開。国内のみならず、アメリカ、フランス、オーストリア、エクアドル、タイなど海外における障害者支援にも積極的に携わり、テレビ東京「ガイアの夜明け」やNHK総合「おはよう日本」など多くのメディアにも多数出演。2024年、フランスで開催されたパラリンピックでは日本選手団の旗手を務める。

スタジオそら事務局

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