子どもが発達障害かもと思ったら?特徴とやるべきこと、診断について解説
2026.01.12- 発達障害とは
- 自閉スペクトラム症とは
- 注意欠如・多動症(ADHD)とは
- 限局性学習症/学習障害(SLD/LD)とは
- グレーゾーン
- 発達障害かもと感じる子どもの様子
- 子どもが発達障害かもと思ったらやるべきこと
- 相談先の探し方
- 相談から診断までの流れ
- 診断を受けるメリット・デメリット
- 診断を受けるか迷ったら
乳幼児健診(乳幼児健康診査)の機会に、発達の遅れの可能性について指摘を受けたり、園や学校等で集団生活の様子を見て、他の子の様子との違いに気づいたりすると、「うちの子、発達障害かも」と思うことがあるかもしれません。園や学校の先生から、医療機関の受診等を勧められることもあるでしょう。ここでは、子どもが発達障害かもしれない、と思ったときに、どのような対応を選択したらよいのか、また誰に、どのように相談したらよいのかについて、ご紹介します。
発達障害とは
発達障害者支援法において、「発達障害」は「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」と定義されています。医学的な診断名としては、近年は自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、限局性学習症/学習障害(SLD/LD)等と表記されるようになっています。
自閉スペクトラム症とは、社会性の難しさやコミュニケーションの難しさ、柔軟な行動をとっていくことの難しさ(こだわり)、感覚過敏あるいは感覚鈍麻といった特徴のある発達障害です。特に、相手の表情から相手の気持ちや要求を察したり、言葉の意図を汲みとって行動したりすることが苦手である場合が多いとされています。
(ASDについて、詳しくはこちら )
注意欠如・多動症(ADHD)とは、注意の逸れやすさ(不注意)、落ち着きのなさ(多動性)、衝動的な思考や行動(衝動性)といった特徴のある発達障害です。これら3つの特徴がすべて当てはまらなくても、どれか1つの特徴が顕著であり、日常生活に支障をきたしている場合に、診断がつく可能性があります。
(ADHDについて、詳しくはこちら)
限局性学習症/学習障害(SLD/LD)とは、全般的な知的な理解には問題がないものの、字を書くことや字を読むこと、計算すること、図形を読み取ることなどの一部の能力が著しく低いといった特徴のある発達障害です。一般に、小学校入学以降に、学習の苦手さに直面することがきっかけとなって診断を受けることが多い障害です。
(SLDについて、詳しくはこちら)
発達障害の診断に関連して、「グレーゾーン」という表記を目にすることもあるかもしれません。グレーゾーン自体は診断名ではなく、「診断がつくかつかないか微妙なところで、現時点では判断が難しい」というような場合に、グレーゾーンと言われることがあります。経過観察、といったニュアンスもあるでしょう。
これまでご紹介してきた、発達障害の特徴は、多かれ少なかれ、ほとんどの子どもたちに見られる特徴であるともいえます。特に年齢が低い場合には、子どもの行動的な特徴が、幼さゆえの特徴なのか、発達障害に起因する特徴なのか、判断が難しい場合にグレーゾーンとされることがあります。発達障害の特徴はありつつも、日常生活における支障がそれほど大きくない場合にも、グレーゾーンとされる可能性があります。
発達障害かもと感じる子どもの様子
子どもの様子を見ていたり、一緒にかかわったりするなかで、発達障害かもしれない、と感じたり、園や学校の先生から気になる行動として伝えられたりすることがあるかもしれません。いくつか、特徴的な様子を挙げてみます。
【発語における特徴】
・発語がない、語彙数が少ない(おおよそ1歳6か月で50語程度、2歳で200語程度、3歳で1000語程度といわれています)
・2歳を過ぎても二語文(「ママ きて」など)が出ない
【コミュニケーションにおける特徴】
・関係のない状況で、アニメのセリフやCMなどを繰り返し話している
・大人と同じような会話ができるが、意味は分かっていない(「最近景気が悪いよね」という話はするけれど、景気の意味を分かっていない)
・説明が苦手で、主語や時系列がちぐはぐになってしまう
・他の人の話に割り込んで、勝手に自分の話をし始めてしまう
・1対1で会話をしていても目が合わない
・話をするときに、対人距離が近すぎる(握手するのにちょうどよいのが適切な距離感といわれています)
・思ったことをそのまま口にし、相手を傷つけてしまう。さらに、傷つけたことに気づかない
・冗談や社交辞令が通じず、本気にしてしまう
【遊び場面における特徴】
・遊びのルールを破ったり、自分の都合の良いように勝手に変えたりしてしまう
・順番を待つのが苦手、自分が1番でないと怒り出す
・集団での遊びに興味を示さず、1人で遊んでいる
・「やめて」など言葉で伝えられず、手が出てしまう
・「貸して」など言葉で伝えられず、無理やり奪ってしまう
・遊びで負けたときに、激しく怒り出したり、相手を責めたりしてしまう
【感情面での特徴】
・相手の表情などから、相手の感情を想像して行動することが苦手で、相手を怒らせたり悲しませたりしてしまう
・ちょっとしたことで怒り出したり、泣き始めるといつまでも泣いたりして、回復が遅い
【感覚面での特徴】
・特定の音に過敏に反応し、耳をふさいで動けなくなってしまう
・白米だけ、フライドポテトだけしか食べないなど、強い偏食がある
・くすぐられたり頭をなでられたりすることを極端に嫌がり、時々痛がる
【運動面での特徴】
・手先が不器用で、ボタンがはめられなかったり、ハサミを上手く使えなかったりする
・走り方がぎこちなく、ジャンプやスキップも上手くできない
・頻繁に転んだり、身体をあちこちにぶつけたりしてしまう
【学習面での特徴】
・ぬりえが上手に塗れず、大きくはみ出す
・文字を書くと、枠からはみ出してしまう
・読み書きや計算が苦手で、練習しても習得ができなかったり、時間がかかったりする
・板書をするのに極端に時間がかかる
・複数の課題が提示されると混乱してしまい、固まってしまう
【日常生活での特徴】
・起床後や就寝前など、同じルーティンで行動しないと怒り出す
・登園、登校の道順がいつもと異なると、不安な様子をみせる
・座っていなければならない状況(集会や授業中、電車の中、食事中など)にもかかわらず動き回る
・突然の予定の変更があると、怒り出したり泣き出したりする
・探し物や片付けが苦手で、いつも散らかっている
・忘れ物が多い
・全体への指示が通らず、指示されたことを行動に移せない
また、これらの他にも、いわゆる「問題」というわけではありませんが、好きな遊びや興味に偏りがあったり、文字または数字に強い興味を示すことがあったり、あるいは記憶力に優れているような傾向が認められる場合もあります。
ただし、これらの特徴は、大人も含めて少なからず誰にでも当てはまる可能性があるものです。1つや2つ、特徴が当てはまるからといって、すぐに「発達障害かも!」と考える必要はありません。
一定期間継続するのか、声をかけて注意を促してもこれらの行動が認められるのか、といった観点に加えて、子ども自身や保護者、先生など、困っている人は誰でどのような場面で問題が生じているのか、といったことを整理しながら、受診の必要性を検討するとよいでしょう。おおよそ、日常生活に支障をきたすほどでなければ、それほど気にしなくてもよいかもしれません。
子どもが発達障害かもと思ったらやるべきこと
まずは落ち着いて観察を
お子さんの気になる様子(たとえばお友だちとの関わり方、集中力、学習面など)が、いつ、どのような場面で起きやすいか、あるいは起きにくいかを記録してみましょう。気になる行動が起きにくい情報が得られれば、その状況に近づけられるよう、調整してみましょう(たとえば、食事中はおもちゃが目に入らないように片付ける、など)。
また、あわせてよい行動が起きやすい情報についても収集することができると、その状況に近づけたり、よい行動を引き出すような声掛け(たとえば、「ちょっと手伝って」など)をしたりすることによって、お子さんのよい行動が増えるだけではなく、お子さん自身も、「やればできる!」といった自信を持つことにもつながると期待できます。
身近なところから相談をスタート
上記のような情報は、家庭内に限定せずに、園や学校など、保護者とは違う場面の様子を見ている先生などからも得ることが可能です。そのきっかけとして、お子さんの様子が気になっていることを、身近な方に相談してみることも良いでしょう。
そのうえで、市区町村の子育て支援課、保健センター、または小児科や児童相談所といった専門機関に相談するかどうかを検討してみることがおすすめです。
これらの機関は、多くの場合、電話で、無料で相談を受け付けてくれます。「発達の気になる点」について情報を整理しながら、児童発達支援センターや発達障害者支援センターなどへの橋渡しをしてくれます。乳幼児健診(乳幼児健康診査)で発達の遅れを指摘された場合にも、これらの機関を紹介されることが多いでしょう。保護者一人で抱え込まず、周囲の人々と悩みや不安を共有することが重要です。
専門診断を受けるタイミング
発達障害の診断などは、診断種別にもよりますが、おおよそ3歳頃から診断がつく可能性があります。しかし、実際には就学前や小学校低学年で、学校生活になじめなかったり、日常生活を送る上での困難さが目立つようになったりして診断を受けることが一般的でしょう。発達検査(WISCなど)や問診などによって、お子さんの特性を評価し、医師が診断を行います。明確な診断がつかなくても「経過観察」や「グレーゾーン」といわれることもあります。また、発達支援(療育)を勧められ、受給者証を取得するための意見書を書いてもらえることもあります。
家族のメンタルケアを忘れずに
一般に、発達障害が疑われたり診断がついたりすると、保護者ご自身が不安や罪悪感を抱きやすいといわれています。保健所や児童発達支援センターなどの機関では、家族支援のセミナーやピアサポートグループが開催されていることもあります。また、家族同士で話題にしにくいと、不安や怒りが高まりやすくなることも知られています。さまざまな機関で、保護者自身の悩みについて相談をすることも可能です。
相談先の探し方
相談したい、と思っても、なかなか最初の一歩を踏み出すことは難しいことも多いでしょう。まずは、相談しやすい相手に、迷っていることや心配なことを伝えてみて、そこから具体的な困りごとや悩んでいることを整理してみることをおすすめします。たとえばご家族、園や学校の先生、習い事の先生などに、「発達障害かもしれない」と気になっていることや、受診した方がいいか迷っていることなどを相談してみると、ご自身の知らないお子さんの様子がわかり、情報収集ができるかもしれません。ご自身が悩んでいることを知り、サポートしてくださったり、一緒に解決の道筋を考えてくれたりするかもしれません。
そしてさらに専門的に相談をしたいと考えた場合には、地域にある、無料で相談できる機関に問い合わせてみることも良いでしょう。代表的な機関をいくつかご紹介します。
発達障害者支援センター(電話相談ができる場合もあります)
発達障害者支援センターは、発達障害のある方やその家族が安心して生活できるように支援する公的な相談機関であり、地域の支援拠点と位置付けられています。発達障害のある方だけではなく、学校や医療機関、福祉施設からの相談も受け付けており、地域での総合的な支援体制づくりの中核を担っています。
公式HPはこちら
児童発達支援センター(電話相談ができる場合もあります)
児童発達支援センターは、障害のある未就学児(主に0〜6歳)を対象に、療育や相談支援を提供している施設です。公的施設として位置付けられており、地域の発達支援における中核的な役割を担っています。相談をする場合には、「お住まいの市区町村+児童発達支援センター」で検索してみてください。
精神保健福祉センター(電話相談ができる場合もあります)
精神保健福祉センターは、精神保健福祉法に基づき、各都道府県や政令指定都市に設置されている公的な中核機関です。地域住民の精神的な健康保持・増進や支援を担っており、電話や面談、訪問によるアドバイスや医療機関、福祉機関への橋渡しを行っています。
公式HPはこちら
そのほかの機関
そのほかにも、地域の保健所や保健センター、子育て支援センター、児童相談所などでも相談を受け付けてもらうことが可能です。上記の機関とあわせて、電話での対応が可能か対面での相談となるのか、通いやすい場所にあるかなどを考慮しながら、相談先を検討してみてください。
相談から診断までの流れ
相談から診断までの流れとしては、①受診先の病院を探して予約する、②受診する、③検査の実施、④診断となることがほとんどです。(図参照)
①受診先の病院を探して予約する
病院は発達障害者支援センターなど相談窓口に相談し、病院を紹介してもらうことも可能です。インターネットで検索したり、口コミで検討したりすることも良いですが、その後定期的に受診する可能性があることを踏まえると、ある程度通いやすい範囲の病院を選択することも重要です。
また、地域によって、受診の予約から実際の受診までに数か月から1年程度かかることもあります。あらかじめ、すぐには受診できないことを想定したうえで、予約を入れたりスケジュールを組んだりする必要があります。
インターネット検索には次のサイトが便利です。
・発達障害情報・支援センター|国立障害者リハビリテーションセンター
・子どもの心の診療 機関マップ|国立成育医療研究センター
②受診
受診の際には、保護者だけではなく、お子さん自身も同行することが必要です。医師や看護師、保健師、心理師などが、お子さんと実際に関わって、話をしてみたり遊んだりして、声掛けに反応があるか、視線はあうか、発語があるか、運動はどの程度できるかなどを観察します。
あわせて、保護者からも、お子さんの普段の様子に加えて、妊娠期や出産時から現在までの様子について質問がなされます。母子手帳や園・学校との連絡帳、子どもの絵や作文、ノートなど、気になる情報が分かるものを持参すると良いでしょう。
③検査の実施
お子さんの年齢にあわせて、WISCやWAIS、田中ビネー、新版K式などの知能検査や発達検査を受けることになるでしょう。おおよそ、1時間から2時間程度かかるため、複数の日に分けて実施される場合もあります。場合によっては、そのほかの心理検査や生理学的な検査を受けることもあります。
④診断
問診や行動観察、検査などの結果を踏まえて、診断がなされます。通常は1回の受診で診断が確定することはなく、数回に分けた受診を通して、総合的に判断され、医学的な基準を満たしていた場合に発達障害と診断されます。そのため、最初の受診から診断まで、数か月かかることもあります。
診断は、「ADHD」など1つの診断がつく場合もあれば、「ADHDと知的能力障害」のように重複して診断される場合もあります。年齢によって、特に年齢が低い場合には、経過観察という形で、すぐには診断がつかず、1年後等に改めて問診や検査が行われる場合もあります。
診断は受けるべき?
【診断を受けるメリット】
子どもの理解と適切な対応の糸口に
お子さんのつまずきや困りごとの背景要因が分かることで、特性に合った工夫(たとえば、視覚的な提示がいいのか、音声での指示がいいのか、など)がしやすくなることが期待できます。それによって、園や学校でのサポートが得られやすくなり、家族間の共有も進みます。
支援・治療へのアクセス
診断がつくことによって、個別の教育支援計画の立案や合理的配慮の提供を受けやすくなります。そのほかにも、地域によっては、行政的サービスを受けやすくなったり、障害福祉サービス受給者証、医療(薬物療法・カウンセリング)、障害者雇用枠、特別支援教育などが利用しやすくなります。早期介入で生活の質が向上します。障害者手帳の取得とそれによる公共施設利用時の割引、受給者証の取得とそれによる療育の負担費用軽減、障害年金の受給などが可能になったりする場合があります。障害のある子どもの扶養者に支給される特別児童扶養手当など、親向けの経済支援も受けられる場合があります。
ただし、サービス提供の基準や内容は、自治体によっても異なる場合があるため、確認が必要です。
安心感と成長のきっかけ
子ども自身が、「自分の努力不足ではなかった」と納得できたり、保護者が「子育てが間違っていたせいではなかった」と気づいたりすることで、より良いかかわり方や努力をするために、前向きにとらえるきっかけとすることができる場合もあります。
【診断を受けるデメリット】
時間・費用・労力がかかる
診断がつく、つかないにかかわらず、問診や検査で複数回の通院(1〜数ヶ月)と自費負担分(数万円)が発生します。経費については病院や機関、自治体によっても異なるため、事前に確認が必要です。
診断がつかないこともある
検査の結果、発達障害の診断がつかないこともあります。また、診断がつかない場合でも、「発達障害の特性なし」ということを意味するわけではなく、かつ困りごとが解消されるわけではないため、「無駄足だった」という思いを抱いてしまうこともあるでしょう。
心理的負担
診断がつくことで、それ自体に対する不安や、怒り、いらだち、否認などの反応が出る可能性があることも指摘されています。
【診断を受けるか迷ったら】
診断を受けるか迷った場合には、以下の観点で整理をしてみましょう。
困りごとの頻度と深刻度
お子さんの困っている行動や様子が、毎日のように生じるのか、それとも週に1度、あるいはそれ以下なのか、振り返ってみましょう。「毎日大変!」と思っても、実際に記録を取ってみたら、実は頻度は思ったより少なかった、ということもあるので、正確な記録はとても重要です。
また、「園や学校に迷惑をかけているのではないか」と考えると、深刻度を高く見積もってしまう傾向にあります。対応策を、ご自身のなかでいくつか立案できるか、それとも手に負えないと感じているのか、といったことも基準になり得ます。
支援・サービスの必要性
診断を受けることによって、得られる支援がいくつかあります。たとえば、障害者手帳や合理的配慮、将来的には就労支援などが当てはまります。このような支援を必要とするか、また、こういった支援を受けることで、お子さんや家族にとって期待される効果が得られそうか、といった観点で考えてみることも重要です。ただし、一部の受給者証や合理的配慮は、診断を前提とせず、受けることが可能なものもあります。
年齢やタイミング
先述のとおり、受診をするためには、予約をして数か月時間を要する場合が少なくありません。また、年齢が低すぎると、明確な診断結果が得られないこともあります。たとえば就学相談に向けて診断をはっきりさせたい、と思っても、すぐに受診できるわけではないことも見越して、スケジュールを調整することも必要です。
さいごに
診断は、あくまで手続きの1つです。診断がついてもつかなくても、その結果を受けて、お子さんの将来に向けてどのようにかかわっていくのかを考えることが重要です。また、「診断名」にこだわりすぎずに、しっかりとお子さん自身の様子をみつめ、お子さんの好きなこと、得意なことを大事に育む姿勢も大切です。診断や受診を通して、お子さんに対する理解が深まり、自信をもって子育てができるようになることが理想的です。




